1990年代のフランスの社会現象が、今の日本に似ているので、当時の雑誌記事などを紹介します。
今回は、リストラ離婚について。出典はわすれてしまいました…。
フランスの失業率は10%以上。厳しい状況は日本以上。
離婚原因の64%は失業です。
「男性の失業は夫婦関係の危機につながりがち」と、心理学者の多くも語ってます。
夫がブラブラしている家庭は、ケンカや気まずい雰囲気になりやすい。
多くの男性は、仕事の成功こそ、強さや逞しさの象徴だと考え、妻や子供もそれを認めている。でも、解雇で、男性の仕事アイデンティティーが失われる。屈辱的な失敗で、パーソナリティーが崩壊し、自分自身がわからなくなってしまうのだ。その戸惑いは、家族が軽減できないほど大きいのである。
妻も夫を理解できなくなってしまう。夫・父親・家長の役割が、現実と一致しなくなり、妻は失望する。特に、専業主婦の場合、妻の社会的地位は、夫に依存しているため、失業は耐え切れないほどの試練となる。
失業当初は、“休憩”と構えていても、しばらく仕事が見つからなければ気が滅入り、夫婦関係が悪化する。空しい職捜しの期間は、非難合戦になりがち。
そして、妻は、別の男に心引かれたり、一人で子供を育てる決心をするのだ。失業に加え、離婚もとなると、立ち直れないほどの衝撃となる。
家族に問題が生じた場合、面と向かって立ち向かい、夫を支えるのは妻である。妻が崩れてしまったら、メチャクチャになってしまうのだ。
失業のショックを克服し、人生をやり直すには、やる気と自信が要求される。一人きりで実現するのは難しい。もし、妻がしっかり協力すれば、夫も乗り越えることができる。
父親が仕事を失うと、家族全員に影響が及ぶ。激励したり、慰めるために、みんなで取り組まなければならない。ただし、精神状態が悪い夫を励ましすぎると、プレッシャーになり、自殺に追い込む危険性もあるので注意が必要だ。
まず、夫が過去の仕事にどれだけ執着しているかを理解するべきだ。そのためには、コミュニケーションをマメにしなければならない。仕事に口をはさむことに反対していた夫が、妻にいまさら自分を支えて欲しいなどと頼みにくいという点を、わかってあげよう。
未来へ前進するには、過去を断ちきり、これから何ができるかを考えるべきだ。そして、夫のアイデンティティーを、社会ではなく、個人として作り直してあげなければならない。
失業は、カップルを接近させるチャンスでもあるのだ。
以下は、フランス人の生の声(記事より抜粋)
女性A(29才)秘書
夫40才が失業し、素晴らしい人とは思えなくなった。何もしない夫と過ごすのは苦痛だった。相手が話し合いを避けたので、喧嘩が絶えず、別れる以外なかった。
女性B(38才)専業主婦
失業した夫は、コンピューターや書類などを家に持ち込み、私の居場所がなくなった。いつも家でブラブラし、落ち込んでいる夫を見るのが耐えられず、息子と家を出た。養育費に悩んだが、ピアノを教えて生計を立てている。
男性C(37才)元株のブローカー
妻との関係が悪化するのに怯え、失業しても、会社から帰るふりをした。妻が会社に電話し、失業を知る。6ケ月後、自分から離婚を申し出た。
女性D(31才)アシスタントディレクター
34才の夫が2年間失業。夫は、不幸を分かち合おうと、妻を失業させたがった。暴力的になり、嫉妬深く、酒を飲むようになった。夫が荒れるのはわかってたが、一緒に住めないと思い、家を出た。
女性E 専業主婦
社長だった夫が失業。これまでは家庭を顧みず、仕事ばかりしていた夫が、失業により家族を大切にするようになった。人間らしさを取り戻し、今の夫のほうがいいと思う。これからも支えになっていきたい。
(2005.02.10 00:07)