フランスでは、女性スキャンダルで政治家が“首を取られる”ことはないが、こうした騒動は、女性に関する法律や社会を動かすきっかけになることもある。
フランスの大統領フランソワ・オランド氏は、女優ジュリー・ガイエさんとの密会が週刊誌で取りざたされ、バレリー・トリルベレールさんとの事実婚が崩壊した。
こうしたスキャンダルがあると、すぐに話題に上るのが、世論調査。オランド大統領の浮気が発覚した直後も、フランスの世論調査が「浮気に関する意識調査」を行っている。
ミッテラン元大統領が引退後に隠し子が報道されたときにも、まじめな総合誌を含め、マスコミはいっせいに「浮気」をテーマに特集を組み、「浮気」議論でわいたのだ。
ちなみに、今回の「浮気」調査は、1970年からの意識の変化が示されている。もともとフランス人が浮気に寛容だったわけではなく、男女平等が進むにつれて、考え方が変わってきているのがわかる。
ミッテラン大統領の隠し子騒動があった90年代当時、浮気された妻の独白をつづった小説がベストセラーになるなど、“耐える妻”の存在がクローズアップされたりもした。
それが直接関係しているというわけでもないだろうが、フランスで婚外子の相続差別がなくなったのは、2001年12月。婚外子の差別が撤廃されたのは1979年だが、相続差別はそのままになっていた。
スキャンダルではないが、シラク元大統領政権時代の1997年から2002年に首相を務めたリオネル・ジョスパン氏の事実婚パートナーが話題になったこともあった。
この期間には、1999年に同性または異性の成人カップルを認めるパクス法、2000年に男女平等政治参画を規定したパリテ法が制定されている。
DVへの対策として新たな法律が制定されたのは、2010年。サルコジ元大統領の前妻セシル・アティヤスさんが夫のDVを暴露したのは、2007年の大統領選挙中だった。アティヤスさんは今年に入り、自叙伝を発行した。
次期大統領候補といわれたドミニク・ストロス=カーンが性的暴行容疑で逮捕されたのは2011年5月。この事件を受け、フランスのフェミニストたちは、新聞紙上で論争を展開した。セクハラ法が改正されたのは、2012年のことである。
オランド大統領の就任後、昨年には同性婚を認める法律が制定された。
日本の政治家は辞職するだけで女性に何の影響も与えない。
日本の政治家と女性スキャンダル
以下のなかには、女性スキャンダルというより、性犯罪も含まれている。
刑事責任を問われるべきケースも、辞職だけですまされているのがほとんど。
1989年
宇野宗佑首相(故人)
愛人だった神楽坂芸者が告発
宇野内閣は直後の参院選で惨敗、首相も史上最短の在任期間で退陣
2000年
中川秀直内閣官房長官、自民党衆議院議員
写真週刊誌等に愛人と一緒に撮影した写真やビデオが掲載される
辞任
2003年6月
筆坂秀世、共産党議員
酒席で女性へのセクシャルハラスメント
党中央委員会から解任、議員辞職
2009年
鴻池祥肇官房副長官、自民党参議院議員
静岡県熱海市に女性と泊りがけのゴルフ旅行に出かける、議員宿舎に女性を招く
辞任
2006年
細野豪志・民主党
山本モナとのキス&不倫旅行
2010年3月
中井洽・国家公安委員長、民主党
銀座ホステスとの路上キス、女性に議員宿舎のカードキーを貸し与える
2011年6月
高橋千秋・外務副大臣、民主党
宿直前に20代女性と深酒し、胸や尻を触るセクハラ行為
2011年8月
筒井信隆・農水副大臣、民主党
30歳下の女性と腕を組んで歩き、マンションに入る不倫疑惑
2011年5月
後藤田正純衆院議員(41)、自民党
ホステスと不倫、2人で議員宿舎にも入っていった
役職を辞め、議員宿舎を引き払う、妻に叱られ
た
2011年
民主党・伴野豊衆院議員(50)、国土交通委員会委員長
韓国人女性が住む東京・西麻布のマンションに頻繁に“お泊まり”
2013年2月
徳田毅元国土交通・復興政務官
19歳だった女性に飲酒をさせ、泥酔させた上、ホテルで無理矢理性的関係を結ぶ
東京地裁に提訴されたが、女性に謝罪し計1000万円を支払う、辞任
2013年7月
内閣府副大臣・西村康稔(50)、衆院議員
2012年7月、視察に訪れたベトナムで現地のホステスを買春
衆議院議院運営委員長・佐田玄一郎(60)
東京・上野のキャバクラで知り合った女子大生と湯島のラブホテルで1回4万円の援助交際を20回
議運委員長を辞任
2013年8月
山本太郎(38) 参議院議員
隠し子
(2017年9月7日)