私の周りは出産ブームです。
先月、従妹が二人目の子どもを出産し、知り合いの日英カップルの間にも赤ちゃんが誕生。
今月もひとり、来月もひとり、新しい命が生まれます。
ブラジルに住む友人からも、妊娠2ヶ月という便りが2日前に届きました。
10月出産の友人は、来週、住み慣れたパリへ旅立ちます。
パンパンのお腹で、2歳半になる娘を連れて。夫は仕事があるので日本においたまま。
彼女は、第1子もパリで生んでいます。
二人目は当初、札幌で出産の予定でしたが、「日本の産婦人科には、もー、うんざり」と、パリ行きを急遽決心したそうです。
理由を聞いて思い出したのが、以前(1995年)、パリで雑誌の編集をしていたときに、ジャーナリストの長坂道子さんに書いていただいた「フランス出産事情」。
副題は、「出産も軽やかに美しく、リラックス妊婦生活 ~気軽な妊娠生活、無痛分娩、出産祝いのジュエリー……、生みの苦しみを尊ぶ日本人とは対照的な素晴らしきフランス式出産とは!?~」。
その号をゴソゴソと引っ張り出して、読み返したら、友人の言っていることと実にマッチしているのです。
長坂さんは、「私は『フランスびいき』とか『フランスかぶれ』というタイプではないばかりか、ときには評価が辛めな方である」と前置きしながらも、「なぜ、フランスという国はそんなに素晴らしいのか」について触れています。
「第1に、『妊娠は病気ではない』という思想が、広く一般に定着している点」
体重管理に関して日本は非常に厳しいのですが、フランスではさほどうるさく言われないそうです。タバコやアルコールでさえ、ボーダーラインがゆるいといいます。
「第2に、フランスに広く行き渡っている無痛分娩(脊髄麻酔を使った出産)」
95年時点で9割の女性が無痛分娩を行っており、友人の話によると、現在はこちらから何も言わなければ無条件で無痛分娩になるとか。
札幌で無痛分娩をしている病院は一ヶ所、医師はひとりだけだそうです。
「日本では、『無痛を選ぶ』という選択がまず皆無に等しく、『出産イコール痛み』というのが常識で、それを疑ったりする者はまずいない」
確かに。なぜか。
「ひとつには、無痛分娩を受け入れにくい精神的な土壌というものがあること。……『生みの苦しみを味わった者にしかわからない極致』というような哲学が根づいている。つまり、痛みもなしで子を生むなど、けしからんというわけだ。激痛を経た日本の母たちは、だから勝利感に顔をほころばせる……」
ニヤリとしてしまったのは、次の文章。
「もっとうがった見方としては、日本に無痛が定着しにくいのは、女たちを社会の一線から遠ざけておこうという男たちの陰謀のためであるというものがある。つまり、出産がそんなに簡単になってしまったのでは、ただでさえ有能な女たちのこと、余力を生かして何をしでかすかわかったもんじゃない、とうことだ」
政府が少子化問題に積極的でないのは、結局、女性たちに最良の環境を提供することに躊躇し、ひいては、女性に活躍の場を与えることを拒んでいるから、ともいえますね。
痛いのは誰でもイヤです。
自分がその痛みを経験する必要がないので、男性たちは女性の痛みをやわらげようなどとは考えないのでしょう。立場が逆だったら、すぐに対策がとられたはず。
などと、私でさえ、うがった見方をしてしまいます。
なぜ女性が産まないのか。
約10ヶ月の妊娠期間が重苦しく憂鬱なイメージとして植えつけられている、という点も要因にあるでしょう。
そう考えたら、少子化問題は、子育て支援だけでは解決しないことは明らかです。
(2008.09.24 22:13)