フランスの育児に協力的な企業

フランスの出生率は、2001年が1.90%。手元にある資料によると、3年連続で上昇している。

1990年代の雑誌の記事で、各企業の育児対策が紹介された。
当時、育児や家事を犠牲にしないで働く環境作りについて多く語られていた。

パリの某病院

早朝勤務の看護師(女性)のために臨時託児所を設置。預かる時間は朝6時30から8時30の間で、子供たちは朝食を食べ、宿題をしてから、病院のバスで学校まで送ってもらう。

航空関係者の託児所

航空関係の仕事は時間が不規則で、託児所探しも容易ではない。パリ空港公団の4万人の社員は個人で問題を解決していたが、エールフランスの労働組合の働きで、家政婦やベビーシッターのネットワークが構築された。パリ空港公団は、誰でも自由に使える、電話と電気を付設した部屋を提供している。
1年後には、ロワシー空港に150人の子供が利用できる託児所がスタートする予定。さまざまな企業から資金が提供される。

新聞社の託児所

夜遅くなりがちのジャーナリストたちは、ベビーシッターへの出費がかさむ。そこで、リベラシオン紙は、1991年に新聞社の近くに託児所を作った。利用時間は、朝9時から21時まで。この託児所は、地域の子供たちにも開放している。

消費者金融の育児補助金

ある貸付会社は、子供を持つ従業員に毎月育児補助を出している。子供1人につき、月675.25フラン。結婚もしくは事実婚の正社員は子供が6歳になるまで、片親の場合は子供が9歳になるまで育児補助金が提供される。

アップル・コンピュータのストレス解消

パリ郊外にあるコンピュータ会社では、12から14時の間、ストレッチ、エアロビクス、ダイエットといったコースで汗を流すことができる。正社員は、ジムの使用が無料。

IBMの女性出張者援助

13歳以下の子供をひとりで育てている女性社員が出張する場合、ベビーシッター雇用のための補助金・一晩95Fが支給される。また、夜勤の単純労働者には、6歳以下の子供の親の場合、つき450フランの補助金が出る。

子供の病気に対する補助金

ある保険会社では、子供が病気の場合、正社員にはベビーシッター雇用のための補助金が出る。また、ある乳製品会社は、病気の子供の世話をするために、託児所と契約している。親が1日50F負担し、あとは会社が補助。このシステムにより、社員が長期欠勤するのを防ぐことができる。

妻の転勤による夫の就職援助

ある会社は、夫の転勤による妻の就職援助だけでなく、その逆も行っている。

病院内のクリーニングサービス

パリのある病院内では、4年前から、医師や看護士ら病院関係者向けのクリーニングサービスを営業している。朝7時30分に店はオープン。失業中の女性が始めた事業で、今では6人の女性が働いている。このサービスが始まった理由は、1991年の看護士による闘争。85%は女性の職場で、「家庭で洗濯物が待っていると思うと、集中して患者の世話ができない」という声が反映されたもの。病院は協会を作り、加入者は年間100フランの会費を払い、さらに1時間40Fを支払うだけで、洗濯とアイロン掛けをしてもらえる。

企業団体の取り組み

グルノーブルの企業団体では、アイロンかけサービスを協力して行っている。靴の修理、クリーニング、洗車などのサービスを行っている企業もある。

退社時間の自由化

リヨンにある製薬研究所では、従業員の80%が女性であり、1992年から、正社員の退社時間を選択制にしている。期間は1年間以上で、育児といった家庭的理由のために好きな時間に帰宅できる。このようなシステムにしても企業経営に大きな影響はなく、会社が必要なときには、社員が進んで協力している。

フレキシブルな労働時間だが

ある保険会社では、週一日、16時30までの早番、学校の休暇期間のみといった、さまざまなワークシェアを用意している。しかし、利用している人は正社員の10%ほどで、管理職は特に消極的である。

建築業界への女性進出

公共事業で働く女性は0%、建設業では4.8%だったが、ある公共事業会社は、女性の雇用に力を入れ、女性社員が8%にまで増えた。

アルザスの女性雇用

男性の多くがドイツに働きに出るため、1990年から、アルザスの企業は女性の雇用が本格化しはじめた。このところ景気は回復し、女性が経済状態の悪化を防いでいるといえる。
さらに、男女均等雇用により、公共交通機関でも女性の採用が増加した。乱暴で評判が悪い男性のバスの運転手の代わりに、同等の能力のある女性を雇っている。

女性の管理職

管理職のなかに女性を加えることが現代のトレンドとなっている。ただし、女性のポストは限定されている。女性は、本来男性の特性である階級意識を要求される仕事をしたがらない。企業が女性に求めているのは、聞き上手なところ、和やかな雰囲気を作ること、イマジネーション、クリエイティブな面、一歩引いて上手に交渉する能力などである。女性管理職としては、コミュニケーション・ディレクター、広報、マーケティングの責任者、コンサルタント、副社長などがある。これらのポストは責任ある任務ではあるが、決定権はほとんどない。
また、企業は、女性=子供=自由に動くことができない、という方程式をいまだに持っている。企業の管理職は、人事のバランスは仕事のバランスを保障すると考えている。さらに、責任あるポストにある子供を持つ女性は、有能で、仕切りがうまく、素晴らしい四角を有していることを証明しなければならない。
女性が得意な、聞いたり分析する能力は高く評価されていて、2/3の女性がコンサルタント関係の仕事をしている。

男女給料格差の廃止

ある製薬会社では、1992~1994年にかけて、給料の不均衡を廃止していった。650人の従業員(そのうち628人が女性)の給与が増加した。それ以前は、勤続年数や能力が同等でありながら、女性の給与は男性より低かった。管理職レベルで20%の差があった。この企業は、1966年当時、研究部門に女性社員がひとりもいなかったが、経営者が男性中心的な体質を改め、女性の能力を活用することを決意した。

人工心臓を作る女性たち

精密で繊細な人工心臓を作る作業は、4万人以上の女性従業員の手で行われている。しかし、この技術には資格がなく、知名度がほとんどない。最新技術の進展にともない、作業員の資格認定が求められる。この業界は、女性の協力なくして成功しない。そこで、プラスティックの加工業界は、1995年、職業の平等化に同意し、男女均等雇用を進めた。女性の雇用、教育、労働条件の改善を目的にしている。

レンヌ市の取り組み

レンヌ市では、これまでは男性優位だった審査委員を男女混合にした。また、技術系の仕事の求人対象を若い女性にする予定である。この斬新な政策は、知事の意向であり、学歴にふさわしい就職口が見つからない若い娘を持つ50代の管理職に支持された。
自治体はまた、女性管理職を増やし、企業体質を変える計画もある。というのも、男性のように、だらだらと昼食をとったり、夕方から会議を始めるのは時代遅れで、女性のように、朝早く出勤し、ランチを手早くすませ、早く帰るといった環境に変えたがっている。

変化しない会社

すべての会社が進化しているわけではない。女性が働きにくい会社はまだたくさん存在している。たとえば、繊維業界では、19世紀の労働環境にいる女性がいる。40万人の正社員のうち85%が女性で、ほとんどが資格を持たず、長年の作業で仕事を覚えている。給与は低く、20年の勤続でも最低保障賃金とほとんどかわらない。

女性社長による組織団体の代表インタビュー

フランスの社長のうち1/4は女性。実力が同等ならば、我々はどちらかというと女性を雇う。反対に、女性社長は、新入社員を雇うとき、すぐに出産休暇について考えてしまう。従業員数が欠如している中小企業の女性社長は、さらに、水曜の調整(フランスの学校は水曜が休み)を心配する。我々がやろうとしている育児援助システムはすべて、手続きに手間がかかる。
女性社長は、自分たちも苦労しているので、学校の休暇期間の休みに関してより柔軟で、階級意識が少なく、会議を長引かせないなど時間に正確である。彼女たちは、17時に子供を迎えにいかなければならないことは理解している。にもかかわらず、かなり前の時点で予定されていた用事のために休みたいと頼む従業員を認めようとしない。女社長もまた家庭の用事をやらなければならず、自分たちはうまくこなしているので、同じようにできない女性従業員をサポートしようとしない。

仕事と家庭に関するヨーロッパの専門家のインタビュー

女性の価値、たとえば、聞き上手なところや、独裁的ではなく同意による経営といった面を生かすための活動をしている。アングロサクソンや北欧の国では、女性の道がもっと開かれている。特に、デンマークでは、女性に高い地位が与えられている。それらの国では、フランスよりも多様な経営がされている。

男女平等職業法(1983年)制定当時の女性大臣のインタビュー

このところ、男女平等が実行されていた企業がつぶれている。ある企業は、27人の女性社員を失業者させたまま営業を中止した。特に子供を持つ片親の女性の貧困化が進んでいる。男女平等職業法は、女性を惨めにするものではなく、平等のための法律になるはずだったのに。

経営コンサルタントの副社長インタビュー

私は女性に協力的ではない企業を知らない。女性は働き者で、実践的で、有能で、ときには男性より従順で、お金がかからない。ただ、戦略的な決断を迫られるセクションに女性を採用しないことは残念である。現代の女性は責任ある仕事をしていても、権力をあまり持っていない。15年前から、「権力のある女性が現れる、もうやってくる、新しい世代を見てごらんなさい」と言い続けてきたが、どこにそんな女性がいるのか? 管理職部門では、以前と何の変化もない。

(2006.01.05 13:20)

仕事と家庭の両立に悩むフランス女性・子を持つ女性の苦労
フランスの女性たちは、もはや男性社会に我慢するのではなく、働きやすい環境を作る実用的な方法を主張している。賃金格差がなくなれば、収入が同等になり、男性も家事を分担するようになるだろう。社会に圧力をかけるには、特に母親たちが動かなければならない。
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