イギリスのBBCラジオのプレゼンターが、「”女性とアジア人を増やす”というBBCの雇用多様性戦略で、”白人で男性”の自分がクビになった」と訴える記事を見つけました。
この記事を読み、「女性でアジア人」の私としては、2つの意見が交錯。
ひとつは、「白人の男性であるのは、自分のせいではない(no fault of my own)」と彼は言うけれど、”自分のせいではない”肌の色や性で、これまでどれだけの人が、”白人の男性”に差別されてきたかを考えたら、その言い分はセコい、という気持ち。
このプレゼンターが悪いわけではないけれど、”自分のせいではない”肌の色や性で差別されるのは屈辱だということを、”白人の男性”も知るべき、という冷やかな感想がひとつ。
もうひとつは、仮にだけど、この男性がクビになり、その代りに「女性でアジア人」の私が採用されても、喜べないな、という思い。
単に「女性でアジア人だから」との理由で仕事をもらっても、うれしくない。
実力を買われたわけではなく、お情けなら、逆に屈辱的。
イギリスでは、テレビや新聞などジャーナリズム業界の男女や人種の偏りが問題になっているようです。
今年3月に発表された、ロンドンシティ大学の調査によると、「イギリスのジャーナリズム業界では、94%が白人で、55%が男性。男女の賃金格差は大きく、そこに暮らす他の民族の声は取り上げられていない」という結果になったそう。でもね、「55%が男性」ということは、「45%は女性」ということで、それだけでも、日本より数段良いと思ってしまいました。
この調査の完全版に、「経験年齢別の女性が占める割合」が載っていました。
経験30年以上:女性33%
経験21年以上:女性42%
経験11~20年:女性46%
経験6~10年:女性52%
経験3~5年:女性50%
経験2年未満:女性65%
この数字を見ただけで、単純にうらやましくなります。
とりあえずジェンダー問題だけで言うと、女性が多ければ、取り上げるテーマも変わるし、視点も変わるし、報道の内容も変わると思うのです。
それと、経験30年以上は50代なので、その世代に女性が3割いるというのも、報道の内容に大きな影響をおよぼすはず。
ちなみに、日本のメディアでは、「雇用の多様性」がほとんど話題になっていません。
ググっても、ヒットしませんでした。
女性の割合は、少し古いのですが、2011年の内閣府男女共同参画局がまとめた「メディアにおける女性の参画に関する報告書」を参考まで。
新聞関連が26.8%、放送関連が25.9%。出版関連は50.5%。
年齢別の女性の割合は、新聞・放送・出版の総計で次の通り。
60代以上:女性13.2%
50代:女性15.6%
40代:女性24.5%
30代:女性33.0%
20代以下:女性49.6%
出版は比較的女性が多いので、新聞・放送に限れば、全体的に女性の割合は減り、特に50代以上の割合はぐっと下がると思います。
BBCの多様性戦略、「女性やアジア人」を優先するやり方が必ずしもいいとはいえないかもしれないけれど、日本の場合、そのぐらいの荒療治をしないと、ず~とこのまま、女性の声が届かない状況がつづくような気がします。