奥さんではなく職業婦人です

面識のない男性に、「奥さん」と呼ばれることが多い。
先日も、ある硬い仕事をしている男性に、何度も「奥さん」と呼ばれた。
おまけに、「無職ですよね」と。
“若くない女性=主婦=無職”というステレオタイプの決めつけは、いったい何なんだ!

「職業はフリーライターです」と答えたら、「フリーター?」といぶかしげに聞かれ、仕事の内容を少し説明しはじめたとたん、「よくわかんないなぁ」と首を傾げられた。
面倒くさくなって、「じゃ、無職でいいです」と言ったら、ホッとしたように、「そうだね、無職にしておきましょう」だって。

こういうことは珍しくない。これまで、何度「奥さん」と呼ばれたことか。

一番驚いたのは、30代後半だったのにもかかわらず、北海道大学の守衛さんに「お嬢ちゃん」と言われたこと。
そのときは、さすがにひっくり返りそうになった。
女の子を“お嬢ちゃん”と呼ぶ人が昔いたことを思い出し、そんな呼び名をまだ使う人が21世紀にいることを知って、クラクラした。

札幌は、女性の地位が低い、と思ってしまうことがある。
特に、働く女(この表現は大嫌いだが)に対する認識が低すぎる。
そして、女性の意識も決して高いとはいえない。この言い方は少し乱暴かもしれないが。

札幌にも働く女性はたくさんいるし、意識の高い女性もいることはいる。
アクティブに活動している女性たちは、たくましくて頼もしい。
でも、その職業はかなり限られていて、教師、自営業、市民活動やボランティアに励む主婦といったところだ。
それ以外の職種、たとえば、企業で働く女性たちは、東京の意欲的なタイプとは違うように感じる。

そう推測できる証拠というか、「ビッグイシュー(路上生活者支援雑誌)の購買者が、東京などはOLが最も多いが、札幌はOLに全くというほど受け入れられていない」という事実がある。

がんばっても認めてもらえない風土なのか、がんばろうという女性が多くないのか。
テキパキ働くタイプは、ここでは受けが良くない気がする。
女性の意識の低さに比例して、男性の意識も下がる。

男女の格差というのは地域によって異なる、とつくづく実感してしまう。
全国共通の目標を立てるとき、どこを基準にするのだろうか。
男女格差を縮めるためには、男女の意識に関する地域格差も是正する必要があると思う。

「スウェーデンに学ぼう」というのは、札幌ではハードルが高すぎる気がしないでもない。
人の意識を変えるのは地道な努力が必要で、実現不可能な理想を夢見るより、もっと身近な問題から解決していったほうがいい。
当面の目標は、それなりの年齢の女性を誰でも「奥さん」と呼んでしまう男性(そして女性も)を減らすこと。
“世の中にはいろいろな仕事があり、女性の生き方はひとつではなく、きちんと専門分野で働いている女性がいる”ということをわかってほしい。

働く女性の自覚とやる気が高まったら、男女どちらも意識が変わり、もっと暮らしやすくなるはずだ。

(2007.10.29 02:36)

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