両親の離婚と子供の殺意

離婚した親を憎み、犯罪に走る子供の事件が続いています。
前にも書きましたが、イギリスもフランスも離婚が多いにもかかわらず、私が知っている限りでは、親殺しといった事件に遭遇したことはありません。
6月、ロンドン在住の友人と昼食をしているとき、「日本では離婚したら母親が子供を引き取るのが普通で、父親は子供に会う機会が少ない」という話になりました。友人は、「それはおかしいよね。だからあんな放火事件が起きちゃうのよ。イギリスでも相当恐ろしい殺人事件があるけど、親殺しなんてないわ」と一言。
あれからも似たような犯行が続いています。
この現象は日本独特で、イギリスやフランスとの違いを考えると、やはり離婚のあり方にあるように思います。
子供のために愛情もなく同居することは賛成しませんが、“子供の権利”を無視した別れ方は問題です。
子供の想像力不足を嘆いていますが、大人のほうこそ自分のことにいっぱいいっぱいで、子供の将来について想像を働かせる余裕がないのではないでしょうか。

ずいぶん以前から、フランスのメディアでは、離婚と子供に関するテーマでひっきりなしに議論が繰り返されていました。
そのうちのひとつに、「離婚した父親が子供と会う権利」があります。
フランスでは、離婚して母親が子供を引き取った場合でも、最低でも週に一度は父親と過ごすことが義務づけられています。
にもかかわらず、争って離婚したり別れた父親は、子供と会う機会を失うケースが多いそうです。
そこで、子供に会うことができない父親たちは団結し、権利を主張しはじめました。
10年ほど前の女性誌に、次のようなレポートが掲載されています。

母親と暮らす子供のうち、父親に会う機会が一ヶ月に一度より少ないのは42%で、全く会っていない子供もいる。
ある調査によると、離婚や別離後に母親と暮らす子供は全体の85%で、父親と子供の関係の断絶をするのは、元夫を嫌悪する母親である場合が多い。
父親が再婚などで新しい家族を形成すると、子供との絆が弱くなる。ひとり暮らしの父親の場合、62%の子供は父親と月数回会っているが、再婚した父親に月数回会う子供は30%に減少する。父親が関係を断つのか、母親が父親に近づかないようにさせるのかはわからないが、父親と子供の関係の弱さが、現代社会で最も重要な問題になっていることは確かである。
母親が子供を連れて実家に戻ってしまって父親と会うチャンスがなくなる場合など、どうするかが問われている。
いずれにしても、子供に会うために戦っている父親は15%しかいない。というのも、裁判で勝訴する可能性が低いからだ。
ある社会学者の調査によると、父親が親権を得る可能性は、0.5~30%と裁判官の偏見によって幅がある。離婚裁判には女性優位の性差別がある。養育費を支払わない父親の99%が有罪とされ、そのうち24%は刑務所送りとなる。一方、父親に子供を会わせようとしない母親は、11%だけが有罪とされ、刑務所に入るのは0.7%のみである。
父親に子供を会わせようとしない軽犯罪は、過去15年で10倍に増えており、父親と子供の関係を壊している。
養育費を支払わない父親のうち30%は、支払い能力がない人だが、母親はそれを理由に子供を会わせようとしない。
これに対し、昔のフェミニズム運動のように、父親たちは直接行動に出はじめた。その結果、政府も動き、子供に会う権利は保護される傾向にある。父親に子供を会わせようとしない母親には罰金を課せられるなど、制裁を下されることになった。

(2006.08.30 16:26)

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