子供から見た少子化 ・フランス

国立人口問題研究所のシンポジウム(2000年)で発表されたLaurant TOULEMON(国立人口問題研究所の研究員)の「子供たちの家族」は、子供の目から見た家族を説明し、目からウロコです。

子供の数は、一般的に、母親の産んだ(育てている)子供の数を指します。

例えば、子供の数は減少し、ひとりっ子が増えている、というのは、あくまでも大人の目からの判断です。

子供の目から見ると、実は少し違うようです。

子供の目から見れば、子のいない女性は母親ではないため、対象外になります。

さらに、3人兄弟とひとりっ子が遊んでいる場合、親にしてみれば、3人の子を持つ母とひとりっ子の母の割合は1:1ですが、子供にしてみれば、3人の子は兄弟が2人いて、ひとりっ子は自分だけ。つまり、3:1の割合になります。

このカラクリについて、フランスの資料が解説しています。

フランスの1960年生まれの女性の場合、子供のいない人は14%、子供1人は20%、子供2人は35%、子供3人は23%、子供4人以上が8%です。

大人の目から見ると、子供2人がやや多く、ひとりっ子と3人兄弟がほぼ同じ割合、子供のいない人も1割以上いることになります。

次に、母親だけに焦点をあてると、子供を持たない女性は対象外になり、子供1人が23%、子供2人41%、子供3人27%、子供4人以上9%で、母親だけの集まりでは、子供2人の母親が圧倒的に多いということになります。

今度は、子供の立場から見ると、23%の母親が子供1人なら23人、41%が2人なら82人、27%が3人なら81人、4人以上が9%なら36人+α上となり、これらを合計した222人+αが学校の全生徒としたら、ひとりっ子の子は10%、2人兄弟は35%、3人兄弟は34%、4人以上の兄弟は20%です。

となると、親の目からは、2人兄弟が多かったのに、子供の目からは、2人兄弟と3人兄弟がほぼ同じ割合で、ひとりっ子が少数派になります。

つまり、子供の目から見た家族数は、大人の考えているのとは一致していないのです。

これには全く気づきませんでした。いつも大人の立場でしかモノを考えていない証拠ですね。

日本でも同じように計算してみようと思ったのですが、年代別の女性の子供の数がわからず。

日本では、ひとりっ子が多いといわれていますが、子供たちはそう感じていない可能性もあります。

子供にとっては、ひとりっ子が多数派ではないとしたら、兄弟が欲しいとか、さみしいとか思っているのかもしれません。

また、社会全体的には少子化であっても、子供の世界では子供たちにあふれ、過去と比べて何も変わってないのかもしれません。

ところで、子供の数がフランスで議論になっている理由は、子連れカップルが増え、家族の規模が変化しているからです。

フランスの子供の数について、少し触れてみます。

1950年以降生まれの女性は、子供のいない人、子供1人か3人が増加しているそうです。

カップルの崩壊が大きく影響し、子供のないまま別れるケース、二人目が生まれる前に別れるケース、そして、2度目の相手と3人目の子供を作るケースが増えているからです。

女性の平均的な子供の数で見ると、別れや再婚(籍を入れない場合も含む)による影響はあまりありませんが、家族の規模はバラエティ豊かになっています。

再婚(籍を入れない場合も含む)を子供の目から見ると、同居している母親のところに、新しい父がやってくることになり、ここで、新しい父の子供たち(別れた妻と暮らす率が高いが、定期的に父親とも過ごす)と兄弟関係になります。

また、自分の母親と新しい父親との間に子供ができ、異父兄弟が生まれます。

さらに、一緒には暮らしていない自分の父親に新しい妻ができ、そこで子供が誕生すれば、父方の子供とも兄弟関係になります。

親同士は、男女関係が崩壊した時点で終わりですが、子供たちにとっては、兄弟の数が広がっていきます。子供が、どの子とどのような関係かと区別するのは難しく、すべてを兄弟としてつきあい、兄弟の数は複雑化していきます。

フランスのこのような関係は、まだ日本では受け入れられないでしょう。
でも、これまで、離婚や別居などは大人の問題として語られすぎていたように感じます。

フランスと同様、日本でも母親が親権を得るケースが圧倒的ですが、その多くが、別れた夫と子供の交流を断絶しているのではないでしょう。

それが果たして子供にいいのか。子供の本音に耳を傾けてみる必要があります。

(2005.07.30 10:37)

 

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