フランスでも友だち作りがブームに

ここ数年、フランスでは「友だち作り」に関心が高まっています。

2005年3月19日の朝日新聞で、河合隼雄氏のオピニオン欄を読み、それを思い出しました。

この現象は、アメリカ→イギリス経由でフランスに渡ったと思われます。

なぜ「友情」かというと、カップル、家族、仕事が不安定で、友情が安定の代用となるから。

70年代は性の解放、80年代はお金、90年代は自我の時代で、これからは友情が重要テーマになるのだそうです。

前述の記事の一部を要約すると、「日本人は昔から心のつながりがあったが、それは『しがらみ』でもあり、欧米人をまねて、『個人』を大切にし、『しがらみ』を切っているうちに、大切なつながりまで切ってしまった。『しがらみ』ではなく、新しい心の結びつきという『友情』に関心が高まってきた」という内容。

ここでまた、西欧の真似をして「友だち作り」をするのは何ですが、ヒントになる部分もあります。

2000年4月のレクスプレス誌の記事を見つけたので、ご紹介します。

西欧人の友情は日本人とは違う(違った、と過去形にしたほうがいいか)ような気がします。

以前、西欧の「友情」には、私なりに偏見があり、何となくイギリスやフランスの女性とは親友になれない気がしていました。

西欧には馴れ合いの友情があまりみられず、どこまで踏み込んでいいのかわからなかったのです。

なんせ、友情といえば、「走れメロス」や「友情」「こころ」といったベタなイメージしか思い浮かばず、「自立した個人同士の友情の大切さ」なんて教えてもらってない気がします。

大人としての友情の築き方にはいまいち自信がなく、だから西欧式の友情に偏見と疑惑を持っていたのかもしれません。

ひとつ、とても印象に残っていることがあるのですが、イギリス人は、身内により、第三者のほうが心を打ち明けやすいそうです。10数年前のロンドンで聞いた話で、イギリス人は「いのちの電話」(サマリタンズ)の利用率が高いとのことです。

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そのとき、私は単純に、「日本と違うね。日本人はまず友だちに相談するよね」と答えたのですが、バブル崩壊、阪神大震災、オウム事件を経験した日本に戻ってきて、その言葉が宙に浮いています。そんなことを言った自分がとても能天気に見えたりもします。嘆かわしいのですが。

今の日本では、友だちに相談する人が少ないようなので、西欧化したということでしょうか。

としたら、西欧式の友だち作りも参考にしないといけないのでしょうね。これも嘆かわしいけれど。

前置きが長くなりましたが、フランスの「友情観」です。

まず、フランス人の96%が、「楽しみを得るため、人間としてバランスをとる」ために、友だちは必要だと答えています。5割の人が、「友だちは不可欠」としています。

「友だちになら何ができるか」という問い(複数回答)には、「泊めてあげる」95%、「友だちのためなら夜中の3時に起きて、励ましてあげられる」89%、「フランス中のどこにでも、友だちを迎えに行く」83%、「車を貸す」83%、「お金を貸す」88%と、フランス人は友だちにとても親切。

「友情を維持するために何ができるか」には、「考え方を大きく変えられる」27%、「引越し」24%が多いのですが、「何もしない」36%と友情のために何かを犠牲にすることは少ないようです。

フランス人の「本当の友だち」の数は、「5~6人」が22%で、2人、3人、6人以上と続きます。

それでいて、「友情で最も大切なこと」は、「一緒のことをする」17%、「遊ぶ」7%が少ない。

決定的に日本と違うのは、友だちに「心を打ち明ける」フランス人は、たったの17%!

でも、最も多い答えが、「助け合う」59%です。

「心を打ち明けない」で、「助け合う」、しかも、「夜中でも友だちのために元気づける」関係は、日本人として(私だけ?)わかるようでわからない。

フランス人にとって友情に必要なのは「共通の価値観」。

友だち作りによりアイデンティティーを確立し、自我を修正していく。しかし、いい面だけでなく、トラブルになったり、傷ついたりすることもある。

「友だち作りには時間がかかり、それを理解しなければならない」と締めくくっています。

フランス人も、「友だち関係」を模索しているのでしょう。友情に関する本もたくさん出版されているようです。

(2005.03.30 14:45)

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