「義父の精子で体外受精」からみえる家父長制

長野県下諏訪町にある産婦人科病院「諏訪マタニティークリニック」では、平成8年11月から去年までの約17年間に体外受精をした夫婦のうち、110組の夫婦が夫の父親から精子提供を受け、79%を超える79組が子どもを授かり、計118人を出産したそうです。

「義父から提供された精子による治療での1回あたりの妊娠率は38.2%。匿名ドナーから精子の提供を受ける人工授精の1回あたりの妊娠率約5.4%(日本産科婦人科学会まとめ)を大きく上回っている」とのこと。

この件の報道で、高い妊娠率や体外受精による人間関係の複雑さなどが問題になっていますが、それよりも気になるのは、「『義父の精子で子どもを産む』のを本当に女性が望んでいたのか」という点です。
夫の父親から精子(夫の兄弟というケースもあるそうです)を提供されるというのは、「夫の家系を継ぐ」意味合いが強いのではないのでしょうか。

日本の異常なまでの不妊治療は、家父長制に大きくかかわり、いまだに女性が世継ぎを産むマシーンであることの象徴でもあると思います。

日本の生殖医療技術は世界水準を誇り、医療施設の対人口比は海外と比較して高いといわれています。
その一方、児童虐待、いじめ、子どもの貧困などなど、子どもに関する事件や社会問題は日々絶えず、解決に向かっているとはいえません。

産む女性、生まれてくる子どもたちの人権が十分尊重されていないこの国において、最先端の不妊治療は、いったい何のため、誰のために必要とされているのか。
いつもそう疑問に感じます。

フランスの不妊治療についてちょっと調べてみました。
フランスでも「義父からの精子提供」があるか探しましたが、まだ見つかっていません。
「義父が出産に口を出す」という不満は見つけましたが…。

フランスの法律では、高度生殖補助医療を受ける条件として、「男女ともに生存しており、2年以上結婚ないしは同居しているカップル」(独身者と同性愛カップルは不可)、「社会保険適用は43歳まで」となってます。

法的拘束力はないにしても、不妊治療の専門団体のサイトによると、「不妊治療は43歳まで」としている病院が多いようです。
「36歳未満のみ」の病院では、成功率40%ですが、「43歳まで」の病院では、成功率が20~25%に下がります。

不妊治療専門サイトには、「不妊治療以外の手段 養子縁組」という項目もあり、養子縁組関係機関が紹介されています。

日本には、不妊治療後をフォローするシステムが不十分といえます。

(2014年8月1日)

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