イギリスで実施された性調査結果が、1994年1月16日のインディペンデント紙日曜版に掲載されました。4ページにわたり、文字がびっちりです。
この調査では、過去50年間で大きな変化があったと結論づけています。さらに10年たっているので、イギリス人の価値観はまた変わっているかもしれません。
結果よりも、調査にいたるまでの過程が興味深い。
この調査は、エイズおよび教育対策を目的としています。しかし、なかなか政府の許可がおりなかったそうです。そのやりとりについて、約1ページついやしています。
1989年初頭、調査実施が決定し、資金調達のため政府の許可を申請したが、9月10日にサッチャー首相に却下されました。調査は適切ではないとのことでしたが、公式な説明はなかったそうです。ある科学者団体は、「戦後のイギリスで、このような拒絶は先例がない」と語ったといいます。
政治家の一人は、「イギリス人はますます無節操になり、バイセクシャルの世の中になりつつある。このような調査は、エイズで苦しむ人たちの何の役にも立たない」と反対。
そこで、民間の慈善団体が基金を募り、調査を続行しました。
以下、長いですが、本文抄訳です。
このような本格的な調査は、イギリスでも始めての試みだった。
1940年代、アメリカでキンゼイが行った性調査は歴史的価値があるのですが、対象者はボランティアで、白人・中産階級・高学歴の若者だったため、アメリカの全体像とはいえない。しかし、今回のイギリスの調査で、インタビューされた16~59歳の18876人は、社会階級、教育、民族、出身地の違う人々を選出しているため、より包括的で、イギリスの縮図ともいえる。
性調査はいつでも世間を驚かし、20世紀末であっても、それは少しも変わらない。
このような調査を警戒するのは、サッチャー首相だけではないのだ。
キンゼイは辞職を迫られ、1930年代に調査を実施したベルギーの研究者は、警察の家宅捜査を恐れ、夜に仕事を進めたという。
他のヨーロッパ・チームも、エイズ対策として、このような調査を実施しているが、どこでも反対にあっている。スウェーデンでは、調査を中止したぐらいだ。幸い、イギリス人は、アンケートに答えることには反対しなかった。調査の参加を依頼した人の65%から同意を得た。これは高い確率である。
彼らは事実を答えているだろうか? たぶん、全てが正しいとはいえないだろう。しかし、調査員は、なるべく正直に答えてもらう工夫をした。インタビューは家族のいないところで行われ、基本的には面接だったが、よりデリケートな質問は用紙に記入してもらう方式をとった。その用紙は、無記名の封筒に入れ、封印して調査員に手渡すようにした。
回答の正確性を判断するひとつの方法として、異性愛の場合、男女の一貫性に着目した。男性は誇張し、女性は控えめに答えるというのが、この調査では明らかになった。
これまでに何人と性関係があったかという質問の平均は、男性が9人、女性が3,5人だったが、この平均は正しくないだろう。100人、1000人と答えた男性がいるため、数がつりあがっている。5年以内の人数や、一ヶ月内の性交渉の回数においては、男女間での矛盾はなかった。
調査結果は、わかりきったことを伝えているだけだろうか。それは読者に決めてもらおう。
ただ、次の質問に答えてもらいたい。
・15歳までに初体験するティーンエイジャーの割合は?
・大卒は高卒より異性愛性体験をする年齢が早いか遅いか?
・事実婚カップルは、結婚カップルより誠実にパートナーと関係を保つか?
・ビジネス出張で宿泊する機会の多い男性は、そうではない人より性関係を持ちやすいか?
・性欲は年齢とともに衰えるか?
この調査は、エイズ患者の助けにはならないかもしれない。しかし、そんなことは問題ではない。この調査は、どのような人にエイズの危険性があるかを医師らに忠告し、教育の効果を査定する基準となるだろう。エイズになる人を増やさないために、この調査は役に立つであろう。
例えば、16歳以下ですでに性経験のある若者の割合がわかれば、14~15歳で性教育をしても遅すぎると知ることができる。
ある政治家は若い独身者の乱交を危惧していたが、彼らより、別居・離婚・死別者のほうがHIV感染の恐れが高い。
また、ゲイは何人も相手を変えるというのは誤解だということもわかった。
しかし、この調査の最も重要な価値は、私たち自身について知ることである。性は、20世紀末のメディア(新聞、映画、テレビドラマ、小説、広告など)を支配している。あらゆるところで強力なメッセージを伝え、何が容認でき、何が好ましいかのイメージを複雑にしている。
多くの人にとって、性は、興味のあるものであると同時に、大きな不安材料になっているのだ。
自分がアブノーマルかを知りたい人もいるだろう。また、人はもっと楽しんでいるのか、たくさん回数をしているのかを知りたい人もいるだろう。パートナーは貞節か、子供はエイズの危険にさらされているのか、を知りたい人もいるだろう。
この回答で、警戒する人もいるだろうし、安心する人もいるだろう。
ここに知るべき事実があるのだ。
最も変化したのは、初体験の年齢である。
1931~35年生まれの女性の平均は21歳で、半分以上が21歳以降。
1936~40年生まれの女性は20歳、1941~45年では19歳で、その後低年齢化が進む。
1966~75年生まれは17歳である。
2つ目の変化は、近年16歳以下で初体験した人が増えていることである。
1930年以前生まれの女性では1%だったが、1956~60年生まれの女性は10%、1970年前半生まれでは19%になっている。
男性にも同じことがいえる。1930年代前半生まれでは、5割が20歳で初体験、16歳以下というのは6%だった。しかし、1970年代前半生まれでは、5割が17歳、25%が15歳と答えている。
より広い意味での性体験(キス、ペディングなど)については、1930年代生まれの女性が16歳、1940年代生まれの女性が14歳と年齢が下がる。男性の場合は、1930年代生まれが15歳、1940年代生まれが13歳。
性体験と初体験までの期間は、45~59歳では4年、16~24歳では2年。
3つ目の変化は、男女の差が縮まったことである。
初体験の年齢は、女性のほうが遅いが、その差はなくなりつつある。
1966年以前生まれは、女性のほうが1年遅く初体験するが、それ以降生まれでは、初体験の年齢に男女の差がない。
1930年代初期生まれは、16歳で初体験の男性は、女性の7倍であったが、1970年代生まれで16歳で初体験の男性は、女性の1.5倍である。
この変化をどう説明したらいいか。生理学的、文化的要素では完全に説明できない。例えば、ピルの出現が、望まない妊娠の最大の抑止になっていると考えられるが、この調査では、ピルの影響が大きいとはいえない結果になった。初体験の年齢が急激に下がるのは、1950年代で、この一年間の下降率は、その後の30年間とほとんど同じである。ピルが出現したのは1961年で、1972年になるまでは未婚者に処方されなかった。
体の発達が早まったという説も可能だが、十分ではない。
いずれにせよ、4人に一人以上の女性(男性は8人に一人) が、「初体験が早すぎた」と思っていて、そのうちの半分以上が、16歳以前に経験をした人である。ただし、男女の多くは、「初体験の年齢はちょうどいい」と思っている。
階級別の調査によると、クラス1(経営者クラス)の男性の初体験は19歳、クラス5(単純労働者クラス)は16歳。
女性の場合、クラス1は20歳、クラス5は18歳だった。
アメリカやドイツでは、階級の差が最近縮まっているが、イギリスでは差があり、変化のきざしも特に見えない。
教育と性体験は関係があり、高学歴者のほうが初体験が遅く、18歳以前に初体験するのは、大卒の男性の5人に一人、高卒の男性は5割。
民族の差では、アジア人は遅く、アジア人の女性で16歳以前に初体験をしたのは1%だけ。
アジア人の男性は20歳、女性は21歳。
黒人は、男性が特に早い。黒人男性は17歳、女性は18歳。
白人の平均は、男女とも18歳。
宗教の差では、16歳以下に初体験した人の多くが、無信仰者で、女性は特にそのケース。
キリスト教以外では、16歳以下に初体験した人がほとんどいない。
カトリックの男性は、他の宗教の人より、16歳以下で初体験する人が多い。
英国国教会の信者は、他のキリスト教徒より16歳以下での初体験が多い。
避妊については、16~24歳の1/4以下の女性、1/3以下の男性が、初体験で避妊をしなかったと答えた。
1960~70年代、初体験でコンドームを使う人は30~40%いたが、80年代の中ごろ、コンドーム使用者の増加がゆるやかになった。しかし、1990~91年の調査では、コンドーム使用者が60%にのぼり、エイズ教育が普及していることがうかがわれる。
初体験の相手は、43%の男性、51%の女性が、恋人と初体験。
29%の男性、16%の女性が、よく知っている相手と初体験。
1930~40年前半生まれの女性の38%以上が、結婚まで処女で、14%が婚約時に初体験。
1960後半~1970前半生まれの女性では、結婚まで処女という人は1%以下、婚約時に初体験というのは3%のみ。
男性は大きな変化はないが、年長グループは、14%が結婚まで童貞、6%が婚約時に。
若者は、結婚まで童貞と婚約時に初体験の両方をあわせても、1%以下となった。
初体験の理由は、45~59歳の女性の50%以上が、「愛しているから」だが、この率は年齢とともに減る。
16~24歳で、「愛しているから」と答えたのは1/3(約33%) だけ。
男性で、「愛しているから」と答えたのは、45~59歳で22%、16~24歳で17%。
「好奇心」と答えた若い女性は25%で、年長者の女性になると10%以下。
「好奇心」は、若い男性の重要なモチベーションになっている。
「友だちがしてるから」と答えたのは、男性8.4%、女性4.4%。
「捨てたかったから」は、若い男性が10%、年長の男性が50人に一人で、女性はほとんどいない。
「酔っ払ったから」は、男性4%、女性2.7%。
「雰囲気に呑まれて」は、若い女性では6.3%だけ。年長者の女性は14.5%。
最近は、初体験も計画的に行われているようである。
アメリカの調査でも、性体験は自分の意思で行うという結果が出ている。
計画的であれば、避妊の準備が万全にできため、喜ばしいことである。
5年以内の性交渉の人数を聞いたところ、2/3の男性と3/4の女性が一人もしくはゼロ。
1%の男性が22人以上と答え、1%の女性が8人以上と答えた。
生涯での人数を聞いたところ、20%以上の男性と40%以上の女性が一人と答えた。
70%近くの男性と90%以上の女性が10人以下。
7.5%の男性と1.1%の女性が20人以上。
5年以内に500人以上という男性と、100人以上という女性が少しいた。
最多は4500人と答えた男性だが、これほどの数を覚えているはずもなく、実際には1/10と考えていいだろう。
無経験者の割合が高いのは、25歳以下の若者。
性活動を始めた若者は、交際関係を築く期間が短いにもかかわらず、多くのパートナーと性交渉をする傾向にある。
早く経験した人ほど、多くのパートナーを持ちがちで、その傾向は全ての年齢にいえる。
16歳以下に初体験した人は、関係した人の数が多い。40~50歳でもそれは同じである。
16歳以下に初体験した場合、男性では3倍、女性では4倍、関係した人数が多い。
既婚者の男性の20人に一人以下、女性の50人に一人以下が、一人のパートナーだけと関係を持っている。
二人以上関係を持つと答えたのは、男性は100人に一人、女性は500人に一人。
独身者は、1年以内に関係した人数は、4人に一人の男性、6人に一人の女性が一人以上。
事実婚で1年以内に関係した人数は、7人に一人の男性、12人に一人の女性が一人以上。
どの年齢層でも、事実婚のほうが、結婚カップルより多くの人と関係を持っている。
最も多いのが、25~44歳の男性の別居、離婚者、死別者で、40%が、一年以内に二人以上と関係したと答えている。
若い人、独身者のみをエイズのターゲットとするのは間違っている。
階級による大きな差はないが、既婚者と事実婚との関係する人数において、高クラスのほうが多い。
少なくとも二人以上と関係を持ったと答えたのは、クラス1(エリート)・2の既婚男性が6.1%、クラス4・5(単純労働者)は2.2%。
16~24歳の男性の32%は、二股をかけないと答えている。
他の年齢層では、新しい関係が始まった時点で、古い関係を終わらせる人がほとんど。
二股をかけるのは、20%のみ。
年齢が上がるにしたがって、二股率は低くなる。
35~44歳の80%近くが、一人だけと関係を持ち、6%が新しい関係が始まった時点で古い関係を終わらせ、14%が二股をかける。
10人に一人の既婚男性、20人に一人の既婚女性が、5年以内に浮気をしたことがある。
4人に一人の事実婚男性、8人に一人の事実婚女性が、5年以内に浮気をしたことがある。
事実婚男性のほうが、独身男性より二股をかける率が高い。
6.8%の男性が女性を買ったことがあると答え、1.8%が5年以内に買ったという。
この数字は、少なめであると思われる。男性は売春について隠したがるからだ。
25~34歳の男性では2.6%が、5年以内に女性を買ったと答えている。
25歳以下では2.1%で、45~59歳では10.3%である。
この差は、20~30年前は、多くの男性が買春していたからか、年を取った分、経験が豊富だからかはわからない。ただ、年長者の1%のみが、5年以内に女性を買ったと答えている。
買春する男性は減っているようだ。
キンゼイのアメリカでの調査(白人・高学歴男性対象)でも、1900年以前生まれの男性のほうが、その後誕生した人より買春していたとの結果になった。
買春で童貞を失うのは、45~59歳で3.4%、16~24歳ではゼロ。
別居、離婚者、死別者では、14.2%で、5年以内では4.2%。
クラス1・2は、買春する男性が他のクラスより多い。
ホモセクシュアルの男性は、女性を買うケースが多い。
売春婦の客となっているのは、バイセクシュアルの占める割合が高いことになる。
女性を買ったことのある男性の1/3以上は一人だけ買ったと答え、半分は1~10人以下。
500人に一人の男性が、10人以上買ったと答えている。
ビジネス出張で宿泊する男性の25.4%が、5年以内に3人以上の女性と関係を持ったと答え、つねに家にいる人は24.6%と、あまり差がない。
女性の場合、ビジネス出張する21.1%が、5年以内に3人以上と関係を持ち、つねに家にいる女性の11.7%と大きな差が出た。
1ヶ月以内の回数を聞いたところ、半分以上の人が5回以下で、3/4が10回以下となった。19歳の女性の15%が少なくとも25回と答え、それ以上という人が少数。最大は130回。
50代後半の女性の半分以上がゼロで、50代後半の男性の半分以上が2回以下。
20~29歳の女性の半分、25~34歳の男性の半分が、5回以上。
16~24歳の女性は、同年代の男性より数が多く、50代以上の男性は、同年代の女性より回数が多い。
独身者の半分、別居・離婚者などの3/4がゼロ。
事実婚者のほうが、結婚している人より少し回数が多い。
16~24歳の既婚女性の半分が6回以上で、45~59歳の半分以上が2回以下。
年齢よりも、結婚期間の長さに関係し、結婚が長くなると回数が減る。
結婚もしくは事実婚2年以内の45歳以上の男性は、6年以上の若い男性より回数が多い。
女性にも同じことが言える。
性欲が年齢とともに衰退するというのは正しくない。
3/4の人が、「婚前の性交渉は全く悪くない」「ほとんど悪くない」と答えている。
約80%の人が、「不倫は悪い」「かなり悪い」と思っている。
8.2%の男性と10.8%の女性が、「婚前の性交渉を悪い」と答えている。
イギリス人のほうが、アメリカ人より寛容である。最近のアメリカの調査では、36%が婚前の性交渉は良くないと答えている。
16~24歳の20人に一人の男女が、悪いと答えている。
45~59歳では、7人に一人の男性、5人に一人の女性が婚前の性交渉に反対。
50人に一人が、不倫が全く悪くないと考えている。
5人のうち4人、79%の男性と84%の女性が、不倫は悪いと答えている。
36%の男性、62%の女性が、「一夜の情事を良くない」と答えている。
35歳以下は、カジュアルセックスに寛容だが、男女に差がある。
2/3の男性、3/4の女性が、「事実婚のカップルは浮気をすべきではない」と考えている。
半分以上の男性、2/3以上の女性が、「事実婚カップルにおいて、パートナー以外の人と関係を持つのは悪い」と答えている。
「一夫一妻制は正常な形」だとほとんどの人が考えている。
この調査では、イギリスで結婚の重要性が崩壊したとは言い切れない結果となった。
性交渉が結婚のきっかけではなくなったが、多くの人が、男も女も、決まった相手と関係を持つべきだと考えている。
性関係における一夫一妻制は、モラルの問題だけではない。
そのほうがよりエンジョイできると考えているようだ。この点は、たぶん、エイズの広がりを防止しようとする教育者にとって重要なポイントになるだろう。
男女の約半分が、「一人の人と関係を保っている人のほうが、多くの人と関係する人より、満足した性生活を送っているようだ」との意見に賛成している。それに反対しているのは、1/5の人だけである。
「相手を知れば知るほど、セックスは良くなる」については、2/3が賛成している。
婚前性交渉の経験者のうち、5%の男性、4%の女性だけが、婚前の性交渉に反対している。婚前性交渉のない人ほど、それに反対しているが、これらの人は少数派である。
5年以内にカジュアルセックスをした人のうち、38%の男性、64%の女性が、後悔している。
(2005.04.08 00:09)

