フランスで増加する独身女性たち

「負け犬」というか、独身女性増加現象は、フランスも同じです。

ここで言う独身女性とは、「男と暮らしていない女性」のことです。フランスでは、結婚と同棲がほとんど同価値なので、未婚とか独身という言葉は使いません。

1999年に、社会学者Jean-Claude Kaufmannが『La femme seule et le Prince charmant(独り身の女性と素敵な王子様)』を発行し、かなり話題になりました。

90年代末にフランスでは"独身女性"現象が話題に1/2
1990年代末、フランスでも注目された独身女性現象。社会学者ジャン=クロード・コフマンが1999年に刊行した『La femme seule et le Prince charment(独身女性と素敵な王子様)』は、多くのマスコミに取り上げられた。「男性の孤独」についても多く書かれている。

「男と暮らしていない女性」を調査し、その結果をまとめた一冊です。

いまだ読破できずにいるのですが、仏版マリー・クレールで彼のインタビュー記事があったので、ご紹介します(訳は完璧ではありません)。

歴史を通して長い期間、独身女性は、むしろ高年齢の女性が大半だった。しかし、90年代に、この現象は広がりをみせた。すべての女性にというわけではなく、ここ数年、特に若い女性に独身傾向が広がった。特に、25~35歳の女性は、20%がひとり暮らしをしている。

女性が大人の仲間入りする第一歩は、もはや結婚ではなく、シングル生活である。25~35歳の女性たちは、パートナーや夫のいない生活を本当に選んだわけではない。どうしたらいいのかわからないのだ。

仕事や男女関係の不安定さ、曖昧な現代社会において、彼女たちは、仕事とプライベートを同時に成功させようと苦しんでいる。若い女性が家庭に束縛されたとき、仕事の将来性は犠牲になる。母や妻であるため、彼女は家庭を優先しなければならない。キャリアを積むのは二の次となる。

「自立した生活を築くこと」と、「普通の家庭生活を築くこと」という、まったく矛盾した2つの必要性を明示しながら、暗に、われわれの社会は、女性に2つの生活を切り離すことを余儀なくさせている。現在の若い女性にとって、35歳まで独身でいることが、自立の基礎を確立する唯一の方法である。彼女たちはまず、仕事中心の生活をし、もっと後になってから、夫婦生活、家庭生活におさまる。

経済力が不十分な女性にとって、結婚や夫への依存は、いまだ唯一の解決策である。十分稼ぐことのできる女性たちは、選択したわけではないにしても、独身生活は貴重なものとよく心得ている。

女性たちの告白の中で、最も繰り返し出てきたのが、彼女たちの生活の矛盾と複雑さの局面である。女性の独身生活は、2つの側面を抱えている。自由で自立している安楽さと、期待と欠如の空虚さの両面が存在しているのだ。

独身生活当初、女性たちは、自分の生きたいように生きる喜びを発見する。そして、自分自身で選択し、やりたいことを実行する自由を経験する。ただ単純に、「チョコレートをほおばり」「着たいものを着る」といったことでもある。家庭生活の強制とは正反対の、リラックスした、気楽な自宅での生活を語るのを全ての女性が好んだ。

彼女たちにとっては、日常生活そのものの、価値が変わってくる。カップルのシンボルであるベッドは、リラックスした生活のシンボルになる。ベッドの上で、のらりくらりし、ときには食事をしたり、仕事をする。ベッドは、独身彼女たちの繭である。しかし、同時に、友となるベッドは、苦しみをもたらしもする。この繭の中で、彼女たちは時々欠如を感じる。セックスではなく、存在の欠如、暖かさの欠如を感じるのである。

時間がたつにつれて、自由は疲労へと変化する。彼女たちは、選択し、決定し、発明しなければならない。いつも疑問と質問で頭がいっぱいになるのだ。「私は誰か? 私は誰になりたいのか? どうやって道を見つけたらいいのか、自分の将来を築く方法は?」 すべてがうまくいっているときは、独身者は一人でいて幸せだが、すべてが複雑になったとき、ひとりぼっちの疲労感を見出す。

独身生活に終止符を打つことを夢見る人はいるが、ほとんどの人は、独身天国の心地よさも知っているところに、問題がある。

“独り身の女性”を、本のタイトルに使用したが、この命名はあまり適切ではない。“独り身の女性”とは、一生独身の女性のことで、そんな女性は存在しないに等しい(大人の女性の5%以下)。女も男もプライベートの生活が完全に変化しただけである。

現在、さまざまな生活形態を経験しながら、プライベートの生活が築かれていく。恋愛や性交渉があるなしにかかわらず、一人暮らしの生活を過ごしてから、多様なカップル生活へと変化していく。すべて、もしくはほとんどの女性が、一人暮らしの期間を経験している(将来的にも、経験するだろう)。25歳以上の女性たちは、一人暮らしからカップルへの生活へと移行していく。

早い時期に結婚や家庭生活に入らないのは、彼女たちが、70~80年代のモデルを真似ることを否定しているからである。「仕事と性生活を両天秤にかけて、カップルと家庭を捨てたキャリアウーマン」でも、「両方を同時に成功させようと疲れ果てたスーパーウーマン」にもなりたくない。実際的、現実的に、彼女たちは、2つの生活に背中を向けたりはしていないが、「家庭生活の責任」を目の前にして後退りする。

女性たちが捜し求めているのは、自立とは関係のない感情的、愛情的、性的生活だ。彼女たちが同居や結婚を決心したとき、キャリアを犠牲にしない軽さを求める。新しい世代は、家庭生活の脅威に打ちのめされることなく、孤独の恐れから脱出しようと試みている。そこで、彼女たちが生み出すのが、「理想の王子様」の夢なのだ。

「理想の王子様」は、女性たちがイメージした興味深い人物で、彼女たちの気分により変化する。調査した9割の独身女性が、「理想の王子様」について書かれている。「理想の王子様」には顔がないことが多い。肩と腕しかない持たないが、温かく抱きしめてくれる。男性の援助がなく、不安なとき、「理想の王子様」で支えや安心感を得ることができるというのである。

しかし、裏を返せば、一人暮らしの女性はまた、「理想の王子様」、つまりイマジネーションにもてあそばれているともいえる。生活に過大な負担を背負いながら、より大きな孤独の中で身動きできなくなるのである。

「理想の王子様」は、昔のロマンチックなタイプとは違い、現代風の「男女平等の恋愛関係」に基づいて生まれる。昔の「理想の王子様」は、古風な愛の定義に一致していた。波乱に満ちた人生を送るヒーローは、独身女性たちに特別視されていたのだ。過去の「理想の王子様」は、理想の男性を表し、全く予期しないで、突然ひらめきのように空から落ちてくる人であり、「期待すること」だけをしてくれる。50年代の「理想の王子様」は、独身女性を権威的に支配した。多くの女性は、可能性がほとんどないまま、運命の出会いが訪れるのを辛抱強く待つことに満足した。

今日でも、この恐ろしい「理想の王子様」は、独身女性のイマジネーションの中で生まれる。自分の人生に責任をもたなければならないことにウンザリしている女性たちによって、生み出されるのだ。

ヒーロー的な男性概念は、独身女性を安心させる。ただ、大恋愛を受身で期待し、孤独の中に閉じ込もり、最も伝統的な男女関係に縛られがちでもある。「一人ではなく、カップルではなく」という世代は、現実から逃れたいだけなのかもしれない。

現在女性の幻想が、今風「理想の王子様」を誕生させた。「理想の王子様」は、元来の恋物語ではなく、新しい恋愛バージョン、つまり、二人の個人が出会い、二人で築く人間の愛に基づいている。

「理想の王子様」としての幻想的な男性は、サポート役になってくれるのだ。新しい理想の愛の探求において、「理想の王子様」がより遠いところへと連れて行ってくれる。別の愛の法則を見出し、伝統的なカップルとは違う結果を想像するために、「理想の王子様」の存在が必要なのだ。

昔のように、「理想の王子様」をただ待っているのはやりきれない。受身の女性は現代ではそれほどたくさんいないが、より現実的な独身女性は、「理想の王子様」に引きずられがちだ。「理想の男性を見つける」といったジャンルの実用本を買い揃えた女性は、全てが修正され、コントロールされる。それゆえ、全く空しい、極端に合理的な方法を繰り返し、身動きできなくなる。

現代社会において、愛を求めるのは、危険を犯すことであり、驚きを認めることである。とにかく、恋愛とはかなり複雑なゲームで、急に勝負が決まらない。いずれにしろ、ゲームであり、むしろ面白いゲームであるといえる。ただし、その条件として、相手を怖がらず、湧き起こる感情を認め、どうなるかを知るために限界に挑むことを覚悟しなければならないが。

一人暮らしの女性たちは、夫婦生活や家庭生活とは違うプライベートの生活を持っている。だから、ある方法、または別の方法で、ゲームから外れ、規定から外れ、失格したように感じてもいる。誰も彼女たちを責めたりしないが、決してそうとは言い切れない。独身女性は、歪曲表現や沈黙で、暗に「後ろ指」を指されるのだ。

例えば、映画館の行列にさえ、暗黙の蔑視は存在する。独身女性は、幸せを絵に書いたような家族を見て、気分を悪くするだろう。さらに、「あなたのように生きるのは賢いわ。それぞれ、好きなことをすればいいのよ。でも、私はおばあちゃんになりたい…」と母親は娘に言うのだ。

結局、独身女性もカップルで暮らす女性も、「家事の負担から逃れたい」という共通の思いを持っているのだ。独身女性は、アウトサイダーではなく、異常なわけでもなく、全ての女性が夢見ていることを夢見ているだけである。彼女たちが望んでいるのは、恋愛であれ、カップルそして家族であれ、「お互いを尊重し、成熟させる」関係、男女平等社会の愛を探しているのだ。

これまで、独身女性たちは、自分について語らなかった。なぜなら、何が起こっているのかわからなかったからだ。女性たちは、とても孤独で、細分化されすぎているため、自分が抱えている問題は、ただ秩序の欠如からきていると思いこんでいる。そうではなく、独身女性の存在は、転換期の社会における、より重要な、より特徴的な現象なのである。この現象は、北から南へとヨーロッパじゅうに広がり、都市から田舎へ、ほとんどすべての社会階級に見られる。これは大規模な動きであり、我々のプライベート生活はますます複雑な状況へと進んでいく。

独身女性に陰口を叩くよりむしろ、彼女たちの存在に、彼女たちの生き難さに、そして彼女たちのチャレンジに、興味をもたなければならない。独身女性たちは、プライベート生活の新しい展開を明らかにしてくれるだろう。

(2005.03.21 00:24)

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