妊婦の貧富の格差是正を目指す英国のシングルマザー支援

『日刊ベリタ』2006年9月11日に掲載された記事です。

“身の丈”と切り捨てない対策を

健康的な妊娠生活を送った母親と失業中のシングルマザーとでは、生まれた子供の将来に雲泥の差が生じるという。このため英国では、妊婦の貧富格差の是正に取り組んでいる。育児対策はブレア政権の重要な柱のひとつであり、その一環として「2020年までに子供の貧困を撲滅する」公約を掲げている。

中絶よりシングルマザー イギリスの事情
英国のシングルマザーに関する1993年の新聞記事の抄訳。イギリスでは130万人が片親で、そのうち90%が女性、若い女性が多い。問題はシングルマザーの貧困にある。可能な対策として、住宅および家族ローンの改善、逃げる父親を追跡するシステムの強化。

英国では、子供の3割が貧困状態にあり、深刻な社会問題になっている。1999年にブレア首相は、同じ産院で誕生した二人の乳児を例に挙げ、「貧しい母親に引き取られる子どもと、両親がそろった裕福な家庭に帰る子どもは、全く違う人生を送る。恵まれない子どもの生活の質を高め、同等のチャンスを享受できる社会を実現する」と宣言した。

その後、社会保障給付制度の改革や育児サービスの充実といった対策により、公約どおり育児を取り巻く環境は改善しつつあり、約6年で貧困の子供は70万人ほど減った。

出産後の経済的な援助としては、新たな手当の導入や支給額の大幅アップがなされた。児童手当は親の所得制限なしに16歳未満の子供全てに支給されている。このほか、出産休暇手当などが支給されている。

その一方で、妊娠期間の援助が見過ごされているとの指摘もある。妊婦に対しては、分娩費用などが無料となり、妊娠準備金として500ポンド(約11万円)の支給がされるものの、低所得者が健康的な妊婦生活を送るための経済援助は存在しない。

妊娠期間中に現在支給されるのは、失業中の女性や、パートナーのいない女性が受け取る補助金が週50ポンドほど(約1万1000円)で、バランスのよい食事やマタニティー製品を買い揃えるのには不十分だという。

一方、最近の研究で、妊娠前および妊娠中の母親の健康や食生活が、生まれた子どもの体質を決定づけることが明らかになっている。

また英国は他の欧州連合(EU)諸国に比べて、10代の妊娠が多い。18歳以下で妊娠する少女は毎年3万9000人に達し、欧州でも一番多い方だ。

ある調査では、英国の出産のうち3~5割が無計画な妊娠によるもので、そのほとんどが10代の少女を含む低所得者だという。経済的にも困窮している女性たちは、自分の子ども時代の食生活も貧弱で、妊娠した時点で健やかな体調とはいいがたい。

今年発表されたファビアン協会のレポートでも、妊婦の生活向上を最優先すべきだと強調している。

レポートではその解決策として、妊娠割増金の導入を提案している。低所得家庭が受け取る所得補助に、妊娠中の生活援助金として、一定額を追加するというものだ。

もちろん、妊娠割増を導入するにあたり、全く障害がないわけではない。支給したお金が、妊婦の健康向上といった目的に沿って使われるかは疑問だ。

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