『She’s』1991年3月号(主婦と生活社)に掲載された記事です。
ふと心によぎる不安「結婚しないかも……」。そう思い始めている女性たちをルポルタージュ(『結婚しないかもしれない症候群』 主婦の友社)した谷村志穂さん。本命の彼にめぐりあえない女性たちの恋愛心理は?
「恋愛に対してモラトリアムな女性が増えているように思いますね。感情に盛り上がりが見えないというか。決定的に恋愛をせずにここまできてしまい、愛情というより愛着という程度の感情で恋愛を繰り返しているのでは。ボーイフレンドのたくさんいる人というのは、嫉妬もしないし、失恋してもさほどショックを受けない。一度でも心身ともに変化が起きてしまうような恋愛を経ていると、次の恋でも、同じぐらいの心のボルテージを求めますよね。そこまでいかないと満足できなくなると思うんです。でも、それを知らないと、AさんでもBさんでもCさんでも、というような恋愛になりがちなのです」
かっこ悪くても、一直線に走ってみる。それが本当の愛を手に入れる近道、と谷村さん。
「テレビドラマをまねしている風潮ってありますよね。グループでつき合ってまわりくどく。それは楽しいのかもしれないけど、その後の恋愛が続かないんです。2ヶ月で別れたり。結構恋愛期間が短くて。あえて感情に歯止めをかけている人って、プライドについて勘違いをしていると思います。プライドというのは自分から男性を誘わないとか、けんかしても自分から謝らないとか、そういうところにあるのではなく、もっと違った、本来の自分の魂の美しさに初めて持つものだと思うんですよね。今やろうとしていることは、自分に正直なことだろうかって。ぼんやりしていたら、ずっと本気の相手を見つけることができないのではないかしら」
「本音でいうと、私は絶対結婚しませんとか、ひとりで生きます、という女性はそんなにいないと思いますよ」
パートナー探しの情報誌『ミスター・パートナー』の編集長・井形慶子さん。結婚産業の現場に近接しているため、男女が抱くさまざまな結婚観を目の当たりにしている。
「恋愛ベタの若者が増えているように感じます。特に、最近の女性は企画型の人が多いですね。恋愛をする場合、相手の気持ちをこちらに向かせるために、ある程度の精神的な駆け引きとか、自分を演出するとかが必要だと思います。魅力的な人は、やはりその辺の駆け引きがうまいんですよね。異性の喜ぶ言葉とか態度とか知っていて。でも、そのように振る舞える女性が少なくなったという印象を受けます」
けっして押しつけがましく男に媚びるのではなく、上手に自分をアピールできる女性。この一瞬が、本命との出会いかもしれないのだ。
「女生と会話ができない男性が増えているといわれてますが、レベルの高い男性と対等に話のできる女性も少ないと思います。淡々とした毎日を過ごしている人は、いざというときに会話が続かないんですよ。それは、日常生活の幅で決まると思うんです。日常生活の中でどれだけ興味の目を向けているかが、態度や会話に発揮されるのです。幅を持っている人は、会話の内容も豊かだし、どんな話題でも興味を持って会話についていけますね。ほんの1時間や2時間の出会いで、日ごろの蓄積が発揮されるのです。そのためにも、毎日の生活で自分を磨くことが大切ですね」
「やりたいことがたくさんあるから、それが許されるパートナーならほしいけど……」
自分のライフスタイルはくずしたくない、とおっしゃる園田恵子さん(詩人)。
「男の人には幻想があるみたいですね。女性はロマンティックものに弱いとかね。デートのときも星があったら最高のロケーションだとか。女の人は退屈してるんじゃないかと思うんですよ。昔はかわいい女の子を演じるというところがあったでしょ。でも今は男性に対して自信を持ってきて、自分らしさを表現できるようになってきているし、アクティブになってますよね」
しかし、男性の中にはまだ古い考え方が残っていて、男女の意識にはズレを感じるとか。
「女性は男性がパートナーとなってほしいと思っていますが、男性は女性に母親的な要素を求めてきますよね。最近は、男と女の属性の違いがはっきりしなくなってきて、男性でも結構女性的なんですよ。かえって女の子に頼ってしまうというか。頼られると重いし……。経済力もあり、面白いこともたくさんある。逆に、女性が男性化してきてますよね。そうなると、女性にとって結婚はメリットではなくリスクなんです。そのリスクを考えると、なかなか結婚には踏み切れないですね」
しかし、恋愛願望というものは捨てきれないのも事実。3人の男性の中で真摯に愛を見つめる女性が描かれている映画『あんなに愛しあったのに』で見せる男と女の関係が、園田さんの理想の恋愛に通じるとか。男と女の関係であるとともに、人間同士の愛も成立させる大人の恋愛。
「お互いの歩み寄りが必要ですね。もっと寛容にならなくてはと思います。硬直した考え方をやめて、相手を尊重するべきですね」
なぜ恋愛できないの? その原因が実は自分の中にあるのだということに気づいている女性は少ないのかもしれない。そう三好美津子さん (『わたしは独身』 マガジンハウス)さんは語る。
「今、マスコミなどで女性が男性を選ぶ時代といわれているものだから、自分のことを棚に上げて、“いい男がいない”とグチる女性が多いのだと思います。自分をよほどいい女と思い込んでいるというか。だれかに男性を選んでいいという特権を与えられたわけでもないのに……。ファッションでイメージされたいい女幻想を盲信してしまって、これもあれもクリアしているのに彼ができないのは、まわりの男たちが悪いと思い込んでしまう。とても危険なことですよね。また、自己愛の強い人も多いです。“私ってわがままだから”という人いますよね。自分の欠点を認めているようで、わがままな自分をそのまま受け入れてくれなくちゃいやという裏を返せばどうしようもない女。男の人って謙虚じゃない女の人がいちばん嫌いだと思うんですよね」
自分を自覚することで謙虚な気持ちになれる。そのためには“寂しさ”と徹底的につき合ってみるのが効果的。三好さんもひとり旅を経験し、自分が寂しくないふりをしてごまかしていたことを実感。それが結婚へのパワーにつながった。
「たとえばバレンタインディー。義理チョコをばらまいてイベントに乗ったりしないで、ひとりで過ごしてみる。ものすごく暗いかもしれないけど、自分を見つめる時間をつくって本当の寂しさを知れば、謙虚な気持ちになれると思います」
今年の3月で結婚1年を迎える三好さん。
「結婚って、思っていたよりずっといいですよ。ぜひおすすめします」