XXI(ヴァンティアン)は、語り(ナラティブライティング)のジャーナリズムを追求する季刊誌。2008年1月創刊で、発行部数は平均50,000部。
新聞・雑誌類はキヨスクでの販売だが、この雑誌は書籍として書店で扱っている。
編集長のパトリック・ド・サン=テグジュペリ氏のインタビュー(2010年11月)。
私たちは、ナラティブ(語り)ジャーナリズムの必要性に応えようと、XXIを創刊しました。ナラティブ・ジャーナリズムによって、空間を想像してもらおうという考えです。
現在の新聞はニュースが多くなり、想像力を喚起できなくなりました。歴史や調査、検討といったジャーナリスティックな仕事は必要とされず、ニュースを告知するだけになっています。まるで輪転機のように、ニュースは流れていきます。
現在、メディアが経済的に脆弱だということは明白です。いくつかの締めつけがあり、それがメディアにおける極度の消費主義の理論です。フランスではここ5~10年、メディアのベクトルが話題になりました。今日、フランスの新聞の構造は、情報の消費というベクトルでのみ語られています。経済バランスのみに正当性を見出しているのです。
毎号、芸術的なイラストを使っています。こうしたイラストは完全に自由な表現で描いてもらっています。ここで使うイラストは、物語を伝える手法をとっています。
記事が重要なのは間違いないのですが、グラフィックも人をひきつける要素です。XXIは読みやすい雑誌だと、よく言われますが、わかりやすい雑誌作りにも重点を置いています。ただでさえ複雑なテーマなので、うんざりしないよう、シンプルに紹介する工夫をしています。
スタッフは常駐が5人で、そのうちジャーナリストは3人です。その他、世界各地の多くの人々と協同しています。ジャーナリストや作家などさまざまなジャンルの人が、XXIの製作に参加しています。その多くがフリーランスで、提案してきた企画を編集部で採用するかしないか決めます。
XXIは広告が一切ないのが特徴で、書籍として書店で販売しています。売り上げも順調で、財政的にもバランスがとれている状態です。
この雑誌は他のメディアとは競合しません。なぜなら、全く違う種類の媒体だからです。内容は多種多様で、ここから何かを学び、面白いことを想像できます。雑誌のページをめくり、写真や記事を見ながら、さまざまな世界を散歩し、数多くの世界を発見できます。
XXIをオルタナティブメディアという分野で紹介したことはありません。これは雑誌であり、オルタナティブメディアの部分もあるかもしれませんが、特にオルタナティブメディアだとは意識していません。一般的に、フランスでは、オルタナティブというのは、政治的な側面で使われます。私たちの雑誌はそうしたジャンルとは違います。この雑誌は政治雑誌ではなく、右派とか左派とかは、私たちのコンセプトではありません。
新聞はニュースで構成されているのは確かで、それが恒久的につづいています。ニュースはあっという間に通り過ぎていきます。インターネットに対抗する方法がないため、新聞文化は完全に本来の役目を失ってしまいました。
世界的に、新聞は発行部数の問題をかかえています。日本の発行部数は驚異的だと思います。若者が新聞を読まなくなっているのは世界的現象で、日本のようにフランスも若い世代が新聞を読まなくなっています。若い世代はネットでニュースを読んでいます。若者と議論するときがあるのですが、彼らは明らかにこれまでとは違う方法で情報を入手しています。
XXIを創刊したとき、インターネットの時代にいまさら雑誌をだすのか、といった意見も多くありました。しかし、私たちは紙で何かを見せたい、紙の媒体に興味を持っている人もいるし、人はインターネットだけに興味を持っているわけではない、と考えました。
プロジェクトのうえでは、特別な層に読者を求めているわけではありませんが、2号目は若者から大きな反響がありました。たくさんの若い人がこの雑誌に魅力を感じているようです。若い人に注目され、読んでもらうこともとても重要です。
XXIを創刊するまで、フィガロなどの海外特派員としていました。辞めた理由はシンプルです。右や左に派遣され、特派員として伝えるのは、そこで起きた出来事だけです。その背景にある物語を伝えることが欠如していると思ったのです。統計や数字を語るだけでは、真実が見えてきません。
ジャーナリストというのは、世界に興味を持つこと。世界で起きていることに興味を持ち、その興味を人々と分かち合いたい、と思う、それが、ジャーナリストだと思います。
(2015年5月21日)