「フランスでなぜ離婚が多いのか」を精神分析医が分析

「なぜ離婚するのか、どうしたら別れないですむか」についての精神分析医へのインタビュー。

1999年のフィガロ・マガジンで掲載された離婚特集の記事のひとつです。

―夫婦の1/3(パリは1/2)は離婚しているが、離婚を要求しすぎといえるか?

現代人は忍耐力がなくなり、すぐ離婚したがるのは確かに事実だ。
以前、人は社会的な理由で結婚し、最後まで添い遂げた。悲観的にはなりたくないが、個人の自由が尊重される現在、人々はワガママに振る舞う傾向が強まり、夫婦関係を維持することが絶対的な成功とはいえなくなった。
最近巷では、個人の自己達成という考え方だけが、過剰評価されている。
結婚が、個人の自己達成の障害とはみなされなくなった。
パートナーが基準に合わなければ、その人と別れて、別の人とやり直せばいい。
よく言われているように、カップルの私有化が主な問題点になっているだけだ。
内面の領域に引きこもり、自分に目標にあった完全なる自由を手に入れるための関係というのは、一緒に暮らすのには最高に面白いが、同時に、脆弱な結びつきでもある。

―それはどうしてか?

以前、人々は大したことを言わなかったし、二人の関係に大きな影響を与えなかった。
現在では、二人が生活のリズムを見い出し、要求が強まっている。
要求とは、親密なコミュニケーション、相手のために時間を割きたいという願いである。
しかし、現代人はそれができない状況で生活している。
それゆえ、カップルは再び不満を抱きはじめた。離婚増加の理由は、コミュニケーション不足にある。

―しかし、人々は以前より話をするようになったし、語り合うようになったという印象を受けるのだが。

音を発する能力という意味では、確かに人は前より話しているかもしれない。
しかし、熱心に会話をしているとはいえない。
私のところにくる患者のなかには、配偶者をよく理解していると考えている人がいる。
唯一理解しているのは、ベッドの上でのコミュニケーションだけだ。
平等が進展したことで、男女の関係はより親密になったが、同時に、より弱くもした。
なぜなら、肉体的な関係に依存するようになったからだ。
カップルを長続きさせるには、欲望を維持し、豊かにする方法を理解する必要がある。
その作業は難しいが、不可能ではない。それぞれのやり方がある。

―それでは、誠実さや浮気についてはどう考えているか?

20年以上結婚している女性がこう言ったのを覚えている。
「女性たちに囲まれている夫を見ながら、『自分だけが彼を満足させることのできる女であり、夫が人生を共にする唯一の女である』と実感するのが、何よりもうれしい」
この夫婦にとって、誠実さは重荷でも、義務でもなく、自分たちの選択である。
以前の人々は社会的理由で結婚していたため、夫婦はちょっとした浮気は目をつぶることができた。
現在、浮気は裏切りとして受け取られている。
あらゆる要求を満足させなければならない、という夫婦の理想と矛盾する行為だからだ。
たとえ浮気が別れの原因になっているとしても。

―現代人は、完璧すぎる夫婦の理想にはあこがれていないのではないか。夫婦が努力する姿は、愛の率直さと純粋さの概念に矛盾しているようにみえる。

夫婦の理想を抱くのはいいことである。
ただし、その理想が、幻想としての純粋さの投影ではないという条件つきでだが。
私は、結婚の準備のための学校を配偶者たちに提供すべきだと思う。
結婚前ではなくて、結婚後一年間の期間に。
結婚前に同棲したとしても、結婚とは何かを実際に知ることはできない。
配偶者に対する理想が崩れはじめたときに初めて、二人の不一致が現れはじめ、恋愛感情から愛へと変わる。
そのときに人間がやりがちな行為は、お互い譲歩しつづけて関係をゆがめながら仮面をかぶって生活するか、もしくは、すぐに離婚するかだ。
それよりむしろ、危機的状況を分析し、切り抜けることを学ぶべきだ。
人はときどき、見解の不一致から、誤解して事実を解釈することがある。
二人の関係を犠牲にしないで、限度を超えることなく議論する術を知るのは、文明的なスタイルであり、社会的共存のテストでもある。
議論したことのない夫婦は、危険をはらんだカップルといえる。

―離婚が及ぼす負の影響とは何か?

ストレス段階でみると、離婚は最も高いレベルにある。
失業のショックよりも大きく、配偶者の死に次いで、離婚のストレス度は高い。
女性は比較的早く立ち直るが、男性は打撃が大きく、健康に影響を及ぼしがちだ。
男性は、離婚の辛さをアルコールでまぎらわす傾向があり、心臓病を患いやすく、交通事故を起こしやすい。
離婚をしたいと相談に来る夫婦のなかで、その一歩を踏み出すのが難しい人の場合、信仰する宗教の教義を持ち出してくる。
そうした状況は、別れるのはとても難しい。
というのも、離婚により夫婦が罪を犯す、という感情を抱き、強い罪悪感にさいなまれるからだ。
そうしたカップルは、結婚のときに、離婚の可能性を覚悟していても、「これが人生」と言い続けて我慢するしかないのだ。

―若い夫婦にどのようなアドバイスをするか?

いつも一緒にいることを夢見ている一心同体のカップルは、個人の境界線という観念を失うことになる。
黄金の法則は、相手の領域を尊重し、1+1は1にはならず、3になるということを忘れないことだ。
1+1=3が意味するのは、“私”“あなた”“私たち”である。
この“私たち”は、夫婦で分かち合い、一緒に作り上げていくものである。
親密な関係で分かち合っていても、お互いの自律の領域のバランスを保っていかなければ、夫婦の将来は危うくなる。
一般論として、夫婦がお互いに疑問を投げかけもしない関係のまま、それぞれの役割に縛られていたら、関係は退屈でつまらないものになる。
関係が日常的になるというのは良いことではない。なぜなら、日常性が二人の生活パターンとなり、安心感はあっても、刺激や情熱を失ったら、夫婦関係が崩壊するからだ。
夫婦関係において、男性は横暴な男尊女卑に戻らない程度に男らしさを取り戻し、女性は奴隷として犠牲にならない程度に女神となるべきである。
ここ数年、男女の差や役割の違い、補完性の大切さが過小評価されすぎている。
この数十年の闘いのフェミニズムの結果として、男性の墓場を作ってしまったといえる。
今日、男性も女性も自分たちの領域を見出せないでいる。
新しい秩序が定着するまでの間、現在この社会に存在している現実のあり様を、男女関係のモデルとして参考にするしかない。

(2006年4月16日)

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