戦時の雑誌『写真週報』の”ぜいたく夫婦よさようなら”

戦時中の1938年2月から1945年7月まで、内閣府内閣情報部(のち情報局)が編集・刊行していた国策グラフ雑誌『写真週報』は、ソフトに恐ろしい内容を伝えていて、けっこううまい編集。
こういう工夫を凝らした広報誌を作ってたんだ、と変に感心してしまいました。

その企画のひとつが、「ぜいたく夫婦よさようなら」。
派手なNG夫婦と模範的夫婦が紹介されています。

NG夫とは…
フランス製のコスメチックで男のくせに香料の匂いがプンプンする。だいたい舶来の整髪料は鉱物性で、われわれの頭皮には向かないのだ。
英国製ダンヒルはストレイトグレーンのパイプである。高い関税を払ってまでこんなものを買い入れるのを誇りとしていた。
仔山羊の皮でバックスキンのキザな仕立ての白靴などぜいたく以外の何ものでもない。

NG妻とは…
アールデンの白粉、ドラレの頬紅、コティの口紅。欧米依存主義はここにもあった。
毒々しい真紅のマニキュア、プラチナ台に真珠の指輪。
金糸銀糸の訪問着。これ一つで普段着なら五つも出来る。ごくたまにしか着ない着物に無駄な金をかけていたのだ。

模範夫とは…
ネクタイやカラーは柄や色よりも清潔に心を用いよう。新時代の美学は変貌して来た。
重いの軽いのといふ気持ちがすでにゼイタクなのだ。帽子は日よけが第一使命。
服地はドイツだってイタリアだってスフ混織だ。伸びて行く国は身を屈して戦っている。

模範妻とは…
お化粧も出来るだけ素顔を生かす。化粧品は国産品を信頼し、健康美を生かす薄化粧。顔に色を塗って遊ぶのはもう古い。
清潔にさえしえあれば、女の手は美しいもの。体さえ健康なら、爪は自然にバラ色になって来る。
履物の寿命も手入れ一つ。〇〇下駄屋さんに嫌われてもよいから今度こそは耐えのレコード目指して。

NG妻の「アールデンの白粉」は、エリザベス・アーデンのフェイスパウダーのことかしら?
コティは知っていますが、ドラレがわからない…。

戦争になったら、プチ贅沢なんて言っていられませんね。
日本がもし戦争をはじめたら、勝ち組といわれている男性・女性が非難されそう。
勝ち組とまでいかなくても、我慢を強いられ、息苦しさを感じるでしょう。
私は美容もファッションも好きなので、そういう楽しみを一切奪われるのがイヤという意味でも、戦争は反対です。

その一方で、模範的なカップルの吹き出しを読んで、「今の健康ブームって、もしかしたら戦争の準備?」と思ってしまいました。

この他、以下のような企画ページもありました。

『写真週報』についてのウィキペディアはこちら。
2014年8月24日、国立公文書館の「『写真週報』 広報誌にみる戦時のくらし」展にて。

(2015年4月29日)

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