フランスの脱原発派の声:アヴィニョンで活動するグループ

2012年3月10日、11日の両日、アヴィニョンで「フクシマデー」が開催されました。
そのイベントを企画した脱原発グループ「アヴィニョン・モナムール」のメンバー3人にお話をうかがいました。

アリス

「アヴィニョン・モナムール」で活動しているひとりです。「アヴィニョン・モナムール」という名称は、映画「ヒロシマ・モナムール」から決めました。

アヴィニョンでは、3日間のイベントを開催することからはじめました。たくさんの集会や勉強会を企画しました。原発についての理解を深めるのが基本です。

参加者と3日間過ごし、一緒に活動するネットワークを少しずつ築いていきました。
集会からスタートしましたが、最終的に、一緒に行動を起こす、一緒に何かやるという形になりました。

この週末、日本との関係を深め、日本の状況を知る、「フクシマデー」を企画・開催しました。福島原発事故について学ぶとともに、自分たちのネットワークや団体の活動について考えを確かにする機会でもあります。

1月、私たちはアヴィニョンの大きな広場(ピー広場)で、原発事故が起きた際の除染作業員(リクビダートル)の募集したことがあります。その広場を通る一般の人に、私たちが除染作業員募集する仕事をしているスタッフだと思わせ、募集を呼びかけました。人々は私たちが本当にそういう仕事をしていると思ったようです。

私たちがこれを実施したのは、原発に対する意見を聞き、彼らの矛盾を知りたかったからです。ですから、「原発事故が起きたら、この地域の人々を助けるために、リクビダートル(除染作業員)になりませんか?」と、歩いている人に声をかけました。人々は、「事故が起きたら明らかにリクビダートルが必要なので、募集はいい考えだ」と答えました。なのに、全員が申し出を断りました。「それは危険すぎるので、自分はリクビダートルにはならない」と拒否したのです。

これがまさに、フランス人の原発に対する考え方です。原発事故について話しても誰もショックではないし、誰もが事故が起きることへの備えはできているということです。
ピー広場でこれをやったとき、人々と議論が生まれるだろうと思っていました。人々が事故の危険性について質問してくるだろう、と。

でも、まったくそれはありませんでした。「危険な場所に作業員を送る考えには賛成だけど、自分自身はそんな危険すぎる場所にはいきたくない」と人々は言ったのです。フランス人は原子炉が爆発したらどれだけ危険かを知っているからこそ、そこへ行くことを拒否したのですが、原発の利用は否定しませんでした。そこが興味深い点です。私たちが質問した人は、他の人をそこへ送ることを認めながら、自分自身は行くことを拒否するという状況に驚いてはいないのです。

私たちは、質問した人たちの反応にとてもショックだったし、失望しました。

 

 

ボリス

僕らは、学習会や集会を行いながら、フランス社会を少し動かそうと考えています。行動の形を拡大させ、この状況をやめさせようとしています。なぜなら、原発事故があっても、あいかわらず原発が建設されつづけているからです。

脱原発が実現するかは、とても複雑です。フランス人は、原発の技術をいまでも信じています。とても難しいというのは明らかです。

人々に実際に何かを意識してもらいたいので、「フクシマデー」というイベントを企画しました。日本が悪い例として示したように、原発をやめなければ、将来、本当に事故が起きるでしょう。

フランスは国家権力の復活のために、核兵器を所有しています。政治的な問題点は、政党の80%が原発に賛成であり、特に、核兵器を作りつづけることに賛成だということです。実際は、核兵器を作りつづけるために、フランスでは原発をつづけています。つながっているのです。原発と核兵器は別々のものではありません。関係しているのです。

シャーリー

1970年代から反原発運動をしています。正確には、1972年のビュジェ原発建設反対のときで、その後、クレイ=マルヴィル(1977年)原発反対など、あらゆるところで闘ってきました。私は遠くに住んでいたのですが、定年退職し、アビニョンの反原発運動家たちとコンタクトをとりました。

アヴィニョンに来てすぐ、福島原発事故後のフランスの新しい反原発アクション、「アヴィニョン・モナムール」という活動に参加しました。反原発を目覚めさせ、推し進める活動です。

明日が福島原発事故から一周年ですが、今日、原子力の問題についての集会や討論会を開催しています。

アヴィニョン周辺にはたくさんの原子力施設があります。トリカスタン、カダラッシュ、マルクールなどです。私たちは、この地域についてとても心配していますが、同時に、原発が建設されている国際社会についても懸念しています。

脱原発は非常に難しいです。フランスは、完全に原子力産業とむすびついています。なぜなら、核兵器を所有する国だからです。核軍備戦略です。軍事力を正当化し、採算をとるために、原発建設の決断をしています。

平和目的といいますが、実際には、軍事目的と平和目的の間にはそれほど違いはありません。平和目的といえども、原子力はとにかく、軍事目的なのです。

原子力の平和利用と軍事利用の結合は、国家のプロパガンダを作り上げています。エネルギーの代替策がないと思わせ、納得させるようとしています。環境問題の解決策は原子力だ。これが国の論理です。

フランス人はいままで、かなりそれに洗脳されていています。メディア、科学、政治によって、論証されるからです。科学はこの戦略に存在しています。私たちはつねに原子力の必要性を感じさせられています。

原発事故が起きても、チェルノブイリ事故でさえ十分とはいえませんでした。今回、福島原発事故というとても重大な事故が起きましたが、人々は時間がたつにつれて、その出来事を忘れはじめています。

30年もの間、私たちは反原発運動をやってきましたが、いつも同じです。

原発は電気を作っていますが、それは「おまけ」でしかありません。原子力産業の軍事利用の結果として、電気を得るという平和的利用がついてくるのです。少し誇張しているかもしれませんが、最初はそうだったのです。

原子力産業の最初の数十年間は、軍事目的でした。正確な数字はわかりませんが、トリカスタン原発には6基の原子炉があったと思いますが、そのうちの2基か3基は、軍事目的のために確保されています。

次の大統領選の立候補者は、誰も脱原発についての議論をしていません。誰ひとり、です。その話をしないか、「原子力はすばらしい」と言うかです。脱原発について真剣に考えている候補者はいません。誰もこのテーマを好みません。

これは、フランス人の現実のメンタリティに関係しています。誰も脱原発について話したくないのです。たとえば、極左のメランションは脱原発ですが、彼は共産党や他の政党との連携を表明しており、共産党は原発推進派なので、この件について話しません。それを問いただしたら、「脱原発については内部で討議中」と答えました。

原子力の話を持ちだす人は、「再生可能エネルギーに少しずつ置き換えていく」と言っています。30年、50年かけてです。事故は明日起きるかもしれないということをわかっていません。明日、来年、数年後に、事故は起きるといわれています。研究によると、フランスでも、福島と同レベルの重大事故が起きる可能性があるのです。原発はすぐ停止しなければなりません。でも、それを誰も要求しません。

(2013年12月12日)

 

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福島原発事故から1年後を迎える2012年3月9日、フランスの原発銀座地帯アビニョンで、脱原発全国集会が開催されました。 原発立地で反対運動をされている方や放射性物質を輸送する国鉄労働者、核廃棄物処理場建設に反対する人など、フランス各地から...

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