女性除染作業員の取材追記 原発事故から3年の福島市

『週刊女性』(2014年3月11日発売)で女性除染作業員を取材した際、記事にできなかったことを書いていきます。
「除染作業員のなかに、女性もいますよ」と聞いたのは、今年はじめ。

19歳女性除染作業員の思い 福島原発事故の放射能汚染
福島原発事故後、道路や宅地などの放射線量を減らすため、国の除染事業がスタートした。放射能のリスクが男性より高いといわれる女性も、除染作業員として働いている。2人の女性除染作業員に話を聞いた。『週刊女性』2014年3月11日発売号に掲載された記事。

除染作業がどのように行われているか。その時点ではまったくわからなかった。
私が最後に福島へ行ったのは、2012年9月。福島市内の町中で見かけることはなかった。
そのころすでに、除染事業はスタートしており、飯館村に行ったときには除染作業をしているのを見たぐらい。

福島市の友人に聞いたら、「若い女性が働いていて、『え!』って驚いたことがある」との返事。

被ばく労働に詳しい方からは、「ハローワークでも募集してるし、求人サイトを見てください」と言われる。
ハローワークの求人情報で「福島 建設業」を検索してみると、「作業員」の職種で「除染作業員」の募集があった。

グーグルなどで、「福島 除染」のキーワードを入れると、数百の除染作業員募集にヒットする。
除染作業員の求人広告には、「素人でも大丈夫」「簡単な作業です」「高収入」と、目を引くキャッチが並ぶ。
特別な資格が必要なわけでもなく、日給10000円以上の魅力的な賃金。
就職難のこのご時世、軽々しく飛びついても不思議ではない。
「軽作業なので女性にもできます」「女性も活躍中」と女性を募集する業者も。
年齢の下限は18歳。
将来子どもを産むかもしれない女性たちも、何の制限もなく除染の仕事に就くことができる。
「18歳以上」とあるが、男性であっても、10~20代、30代の若者が、被ばく労働をしていいのか疑問だ。

「除染は市内のいたるところでやっているよ」と聞いたが、取材したのが大雪の直後だったため、作業がストップしていた。
そこで、「除染情報プラザ」のビデオで、どのように除染しているかを見る。
ここに展示してあるパネルに、福島全域の除染状況が手書きで更新される。
あまりの数にクラクラ。これだけ除染して、本当に効果があるのだろうか。
福島市の進捗状況(2月末現在)は、公共施設94%、住宅59%、農地100%、牧草地47%、森林(生活圏)1%。

 

女性除染作業員は、線量の低いといわれる地域の宅地除染を主にやっているらしい。
なので、福島市内に住む人から、「女性作業員を見た!」という話はけっこう聞いた。
線量が低いといっても、福島市のこの日の線量は0.15μ㏜で、平常時0.04μ㏜の約4倍である。

驚いたことに、福島第一原発から20キロ圏内の田村市東部で、若い女性作業員が働いていたという事実が、鹿島建設のホームページからわかった。

除染作業は、放射能に対する感覚がマヒした環境のなかで、一般の道路工事や草刈りの延長のように行われている。

この国で、いや、この世界でも、除染作業員という職種は珍しい。そして恐ろしく危険な被ばく労働である。
原発事故が起きなければ、必要のなかった仕事。
除染はまだまだつづき、それに従事する労働者はどんどん増える。
どれだけの人が被ばくすれば、この国は完璧に除染されるのだろう。
除染の効果がないのに、被ばく者を増やしているだけではないか?

「道路工事に出くわすように、除染現場に出くわすことがあります。子供を連れていて、マスクも何も用意してなくても、その道を通らなくてはならないんですよ」
福島市在住の女性はそう言っていた。
「でも、今は雪があるから、除染はしてないですよ。計画通りにはやってないです。そうそう、高校の敷地内に除染した汚染物質が積み重なってるので、ぜひ行ってみてください」

そう教えられ、ホテルでの朝食後、さっそく学校へ行ってみた。
ちなみに、私が滞在したホテルは、復興庁のあるビルにあったので、平日の朝食は、作業員らしい人や、職員らしい人(みな顔色悪い感じ)と一緒になった。
地産地消がホテルの朝食の売りらしく、福島産コシヒカリや牛乳などが並んでいた。

説明通り行ったら、高校にたどりついた。通学路に沿って、敷地内にずら~っと放射性汚染物の袋が並ぶ。
除染作業は終了していないようで、ここに一時保管しているらしい。

福島に住む別の女性が、「美術館と図書館の横に汚染物が積まれていた。開館してないと思ったら、通常通りやっていて、びっくり」と言っていたのを思い出し、美術館にも行ってみる。

福島市の美術館は図書館と同じ敷地内にある。さすがに汚染物はもうなかった。
美術館は除染中。駐車場の奥で作業をしていた。
この駐車場は一般の人が使用しており、そのすぐ近くでガーガー除染していた。

福島市内、どこで除染作業が行われているかは、福島市役所1階の除染情報センターでわかる。ここは昨年4月にオープンした常設のスペース。

宅地除染計画の地図をもらい、「今どこで除染してますか?」と質問してみた。「雪ですからね~」との回答。そして、「詳しくは、隣のプレハブの除染推進課に聞いてみてください」と言われる。
「除染推進課」などという部署がある役所は、どこにでも存在しているわけではない。雪国には除雪推進課があるかもしれないけど…。
プレハブではあるが、中は職員でいっぱい。忙しそうだった。
受付らしい女性に「どこで除染やってますか?」と尋ねたら、「担当者がいないので…」と。

雨女ならず、雪女。あーついてない。

そこで、市内在住の知人に地図を見てもらい、除染をしていそうな場所に連れて行ってもらうことにした。
そしてたどりついたのが、某住宅街の宅地除染の現場。

こうやって、一軒一軒、除染していくのだ。気が遠くなる話。
福島市内の住宅の除染進捗状況は、今年2月末現在で59%。
計画を策定したのは2012年5月なので、残りの40%をすべて終えるには、まだ1年以上かかる計算になる。

この日は女性作業員の姿を見かけなかった。

(2014.03.23 15.22)

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2019年4月、福島県大熊町は福島第一原発の立地自治体のなかで初めて、一部地域で避難指示が解除されたが、10月31日現在の町内居住率は1%。3月に発表された大熊町民のアンケート調査結果をみても、「戻らないと決めている」人は55%を占めている。

帰宅困難区域の女性「帰ったら危ない」で町民に叩かれる『週刊女性』3月24日号

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