新聞社のセクハラ疑惑事件 社内のセクハラ周知は(6)

男女雇用機会均等法では、セクハラの事実があってもなくても、再発防止のための周知や研修などを義務づけています。

道新はMさんのケースで「セクハラの事実は認められなかった」としていますが、たとえそうであっても、再発防止策は講じる義務はありました。

しかし、当時、社内でそのような措置がとられていなかったようです。

社員も知らなかった函館のセクハラ疑惑事件

Mさんの事件の詳細は、「函館支社で口止めされている」らしく、道新社員にほとんど知らされていなかったようです。

例の忘年会は2014年12月、Mさんが死亡したのは2015年2月ですが、3月以降に週刊誌の記事を読んで詳細を知った社員もいたといいます。「報道があれば、通常は『現在調査中』といった通知が出るのに」とある道新記者は述べました。

正式に説明があったのは、6月か7月ごろになってからのことだったそうです。

札幌本社のある部署の社員が会社から正式に説明を受けたのは6月22日。「編集局長から午後1時ごろ、突然口頭で集まるように通知され、その日に2回、午後3時と6時だったと思いますが、そこにいた記者だけが集まって話を聞きました。『調査の結果、セクハラの事実は認められなかった』と紙を読み上げ、10分程で終わりましたね」と女性記者は言っていました。

こうしたやり方に、「不誠実」との声が上がり、特に女性社員から「おかしい」との発言が相次いだそうです。

「女性社員の間では、『会社は守ってくれない』という無力感が漂っています。この事件が及ぼしている影響は小さくないですよ」とある女性記者はもらしました。

道新労組の女性部は、3月の週刊誌報道後に「事実調査」を会社側に求め、4月上旬、会社側から「第三者委員会が調査中」との回答を得たそうです。

女性社員を対象に「セクハラアンケート」も行ったとの話ですが、それがいつのことか覚えていないほど「意味がないアンケート」だったといいます。

他の部署も随時説明があったようですが、社員同士でも確認がとれていない様子でした。

事件から半年以上たっても、社員の多くは週刊誌の情報程度しかわからず、社内でひそひそと噂が広がっていたとのことでした。

就業規定の一部改訂

道新は、Mさんの事件後の2015年4月に、就業規定を一部改訂しました。2年ぶりに改められた文言は計28カ所です。

改訂が最も多い条項は、「ハラスメントの防止 第15条」です。セクハラに関しては、4カ所改訂し、1カ所が新たに追加されています。

第15条は、1がセクハラ、2がパワハラで、どちらも(1)から(8)までの項目に具体的な言動が示されています。

追加されたのは、第15条1の説明で、<1.セクシュアル・ハラスメントに当たる言動とは、他の従業員、派遣社員及び取引先従業員(以下、「従業員等」という)に対してなされる次の各号の行為をいい、従業員等の性別を問わない>が加わったようです。

パワハラの説明も新たに追加されています。

道新の就業規則で、セクハラは懲罰の対象です。

第10章第70条5で、「第15条(ハラスメント防止)に違反する行為があったとき」は、「戒告、譴責、減給、停職および降職、降格」を適用し、第71条5で、「交際・性的関係の強要」や「性的言動への抗議又は拒否を行った従業員等に対する不当な人事考課や業務指導、その他の不利益を与える行為」があった場合は、「論旨退職、懲戒解雇」を適用するとあります。

マニュアルの配布

2015年6月下旬、道新内部に『ハラスメントのない職場にするために』と題されたA4判6枚の文書が出回ったそうです。道新関係者によると、文書は本社経営企画局から社内メールで配布されたといいます。

セクハラなどハラスメント行為の定義を具体的に示し、車内の相談窓口を案内するなどの内容です。文書後半には、ハラスメント加害者に対する懲戒処分の目安なども記されています。

この文書の配布は、会社から正式に函館支社に一件を説明した時期と重なります。

また、『北方ジャーナル』(2017年3月号)には、「毎年配られる『手帳』の末尾に、『内部通報窓口』の連絡先が載っていた。前にはこんなの出てなかったんだけどね」という道新関係者のコメントが記されています。

現在はわかりませんが、2015~2017年当時、社内のセクハラ疑惑事件の周知は、この程度でしかなかったのです。

(2020年7月13日)

タイトルとURLをコピーしました