新聞社で起きたセクハラ疑惑と不審死 事件の概要(2)

道新函館支社の嘱託看護師だったMさんはセクハラの被害を訴え、亡くなる前日に、告発文を含む資料一式をメディアを含む道内の団体機関に送付していました。

いまとなっては、Mさんが作成した告発文書の真偽を確認できませんが、道新関係者からのメール、社内文書のコピー、Mさんが撮影した動画、遺族や関係者の証言は、信ぴょう性があると考えます。

それら複数の資料を参考に、事件から亡くなるまでの経緯をたどってみます。

#MeToo前に新聞社で起きたセクハラ疑惑事件(1)
#MeToo運動前に和解となった北海道新聞のセクハラがらみの民事訴訟。性被害を申告した女性は、会社の不適切な対応を痛烈に批判する告発文を郵送した翌日に自宅で死亡した。マスコミでセクハラが議論されるようになったいま、あらためてこの事件を検証する。

看護師のMさんは、地元の看護学校を卒業後、公立病院に勤務し、2010年に道新函館支社の嘱託社員に採用されました。同社での勤務スケジュールは、火・木・金の週3回、午後だけの半日出勤でした。

2014年12月8日(月)
告発資料によると、セクハラ被害に遭ったとされるのは、道新函館支社営業部の忘年会。二次会と三次会で、社員2人から身体を触られたり、言葉による性的いやがらせを受けたといいます。

2014年12月18日(木)
Mさんは迷った末、12月18日に本社(札幌)総務局の健康管理者に電話をします。受けた女性が偶然セクハラ担当者たったため、自分の被害を相談し、同日、その担当者から<事の次第によっては、厳しく処分する>とメールを受け取りました。

2014年12月26日(金)
しかし後日、<処分するには忘年会に参加した全員の事情聴取が必要>と言われます。
結局、Mさんは会社に提出した2014年12月26日付「ハラスメント相談報告(修正版その2)」に、“処分”ではなく、<厳重に注意をしてもらいたい>と記しました。

2015年1月8日(木)
函館市内のホテルで、Mさんと社員2人の聴取が行われ、<その後、3人の話をセクハラ担当チームで検討してもらい「証拠はないが信憑性が高い」と判断>されたようです。

2015年1月23日(金)
函館市内のホテルの会議室で、社員2人からの謝罪が行われました。この一部始終をMさんはスマートフォンで録画しています。
謝罪に立ち合ったのは、本社労務担当部長と相談窓口担当の男性2人で、女性は被害者のMさんのみです。
社員は、飲み過ぎて理性を失ったなどと説明して謝罪し、Mさんは、「許しません」とだけ発言。両氏は早々に退室しています。

2015年1月27日(火)
Mさんは、本社の女性担当者との電話で、<学芸会のような謝罪だった>と告げ、社員の異動を求めます。

2015年2月5日(木)
謝罪から約2週間後の2月5日、札幌の本社で開かれる会議の案内が届き、Mさんは、当該社員1人と出席しなければならないことを知ります。
その社員が「衛生管理者」として参加すること、長時間の会義に両者を同席することに、Mさんは<押さえていた気持ちが爆発しました>と本社の女性担当者にメールを送っています。

2015年2月16日(月)
Mさんは、2月11日(水)から会社を休み、2月16日に、本社総務局長宛に手紙を送りました。会社側の対応を批判し、賠償か告発かの二者択一を迫る内容でした。

2015年2月19日(木)
総務局次長から返答が速達で届きました。そこに書かれていた、<1月23日の謝罪と注意などで一定程度の対応ができたものと考えていました><もう一度きちんと話し合いを>などの内容に、Mさんは失望します。
この日、Mさんは両親にはじめてセクハラ事件について打ち明けました。6時間近く泣きながら話したそうです。

2015年2月20日(金)
Mさんはメディア機関を含む13カ所に簡易書留で内部告白資料一式を発送しています。
送付資料は、自分で書いた告発文書、2人の謝罪文、健康管理担当会議案内文、本社総務局長宛手紙、同次長からの手紙など10点22枚です。

2015年2月21日(土)
21日の朝5時15分ごろ、Mさんの自宅から失火。Mさんは病院に搬送されましたが、一酸化炭素中毒で帰らぬ人となりました。

地元消防が「火災原因判定書」をまとめることができたのは、2015年6月9日(火)。火災の原因をつくった「着火物」は特定できないとの結論でした。
階段付近にある屋根裏の燃え方が非常に激しく、1階の洗面所や浴室のあるあたりとみられる火元は、真っ黒焦げで、消防の調査でも特定できなかったほど。その近くの台所と、2階の遺体近くに、食用油の空き瓶が計3本あったといいます。
2階の廊下には、市販の住宅用火災警報器が取り付けてありましたが、壊れて床に落ちていました。

遺族は、Mさんが「物置をみておいて」と言っていたのを思い出し、自宅裏の物置で、告発資料や業務日誌などを発見します。
<葬式はださないでください>と書かれた自筆のメモが、北海道新聞2014年12月16日付(Mさんがセクハラ相談をする2日前)の生活面の切り抜きにクリップでとめた状態で置いてありました。記事中の「セクハラ」の文字は、赤いボールペンで囲まれています。

2015年2月28日(土)
Mさんが自殺したと確信した遺族は、道新関係者と面談し、調査を依頼しました。
道新からの解答が届いたのは、6月26日で、「告発された被害すべて認められない」という内容でした。

2015年5月7日(木)
Mさんの遺族は、社員2人を刑事告訴。函館中央警察署がこれを受理し、翌2016年2月15日に2人を函館地方検察庁に書類送検しました(セクハラ事件で女性が自殺し社員が書類送検――問われる『道新』の企業責任『週刊金曜日』)が、同地検は3月31日、不起訴処分になりました。

2016年8月22日(月)
遺族は、検察の不起訴処分を不服として函館検察審査会に審査を申し立てましたが、10月13日に「不起訴相当」と議決されました。

8月22日、遺族は、損害賠償を求めて、道新と社員を相手に民事訴訟を起こします(「社内のセクハラ被害で自殺」――『道新』の対応を民事提訴『週刊金曜日』)。

2018年3月27日(火)
遺族は訴訟を取り下げ、和解終了しました。

(2020年7月13日)

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