パリ·ロンドン·ミラノ·NY世界4都市”美しい女の定義”

『FRaU』1999年9月14日号に掲載された記事です。

パリ

ファッション、美意識の変化にともない、アメリカ勢力に押され気味のフランスだが、培われた歴史はゆるぎない。今でもフランス美容は、世界の注目の真とであることは確か。パリジェンヌにとって、美しくなることは、世界のワンシーンとして組み込まれている。美の本質を追求する探究心を持つが、貪欲さを嫌う彼女たちは、シックという言葉で美を評価する。いきすぎず、人まねではなく、粋なエスプリを感じさせる。

これがパリジェンヌのシック。彼女たちは、長所も欠点も含め、自分をよく理解している。だからこそ、それぞれが個性的であり、一番似合うものを選ぶことができるのだ。

パリジェンヌがもっとも大切にしているのは、ビエネートル(bien-être)。日本語に訳せば、満足感、幸福感。メイク、スキンケア、香り、フィットネスなど美容は表面的なものではなく、人間としての満足感を得るためのものというのが、彼女たちの哲学。美しいことは、心、体、人間関係とすべてに満足感をもたらすのだ。この高い理想がストレスとなり、フランスは鎮静剤の消費世界一という結果にもなっているのだが…。

さらに、恋愛至上主義がパリジェンヌの美的欲求を誘発していることも否定できない。キレイ→自分がうれしい→男もうれしい→満足→キレイ、という図式が永遠に成立する。

次なるパリを着る!
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ロンドン

60年代のツィギーやマリー・クヮント、その後のパンクファッションに、鉄の女サッチャーと故ダイアナ妃、そして90年代のスパイスガールズ。まったく統一性のないのが、ロンドンの女性たちの魅力。伝統的クラシックかと思えば、ぶっ飛んだ突飛さで登場する。はちゃめちゃで型破り。

ここ数年の景気のよさと、ロンドンファッションの盛り上がりで、ロンドナーは一気におしゃれにめざめた。以前は、アロマテラピーには興味があっても、スキンケア、メイクにはズボラという印象だった彼女たち。今では、最新モードのメイクを研究し、各国のスキンケアを試し、スパのエステでボディを磨くことが常識となった。ひと昔前の日本に、ワンレン、ボディコン女が寄生していたように、現在のロンドンには、スパイスガールズもどきの元気な女性たちが、楽しそうにレストランやパブに集まっている。お祭り騒ぎのような一過性の幸せであろうと、それでもノープロブレム。華やいでいるロンドナーは、見てて気持ちがいい。

ハッピーが一番。そう信じている彼女たちは、独立精神旺盛で、強い。神経質に体型を気にしない、仕事を楽しむがすべてを費やさない、恋愛はすが惨めに溺れない。社会的成功とプライベートの幸せのバランスを比較し、選択できる。女性としての誇りと自信が、ロンドナーの美の原点だ。

スウィンギングロンドン(1998年)
『VoCE』1998年9月号に掲載されたロンドンのトレンド特集記事の抜粋です。 ②FoodとFashionのレベルは比例する!? ”ロンドン=不味い”の定式が崩れた。'90年代初めのロンドンのレストランは、雰囲気、質、サ...

ミラノ

モードが元気な今、ミラノファッションに似合うメイクブランドが出現し、世界を意識したビューティの動きに目が離せないイタリア。

最近では、ダイエットもかなり定着し、美の基準が他都市と同等になりつつある。それでも、イタリアで人気があるのは、サブリナ・フェリーリなどグラマーなタイプ。肥満体はバツだが、バストが大きいことは魅力のひとつ。スリムなモデルが世の中でもてはやされていても、イタリアには独自の美意識が存在する。

イタリア人の理想の女性は、いつまでもセクシーで、かつママとしての母性を持つソフィア・ローレン。現在でも、イタリア男にとって、永遠のあこがれ。たとえ男女平等が叫ばれていても、イタリアの伝統はそう簡単に崩れない。女性が美しくありたいと思うのは、ずばり男を魅了するため。ナルシストなイタリア男は、女性から視線をそらさない。見られることで、女は自分に磨きをかける。実際、予想に反して、イタリアの男女は恋愛にはかなり奥手。お互い本気でなくても、「その気にさせる」のがスリリング。とにかく、どれだけ男を引きつけるかで、女の株が上がるのだ。

食べ、笑い、語り、恋をして…。彼女たちがまぶしいのは、人間の本能のままに生きているから。このうらやましい状況は変わりそうもない。

ニューヨーク

つねに挑戦し続けるアメリカ。アーティスト系メイクブランド、自然系スキンケアの急進出、最先端のフィットネスとビューティーセンター。美容の分野でも、アメリカの最新トレンドは世界を駆け巡り、人々を夢中にさせている。

そんな環境の中、ニューヨーカーは、あらゆる情報を収集し、美容知識を高めていく。話題の自然化粧品ショップでは、食い入るように商品の説明書を読み、スタッフに不明な点を開設してもらう女性に会う。まるで医者に相談する患者のように。美しくなることにおいても、決して妥協しない。自分の納得のいくものを、とことん追い求める熱意は、人生に真剣に取り組む姿勢と引けをとらないパワーを感じる。

機能的で実用的。彼女たちは、無駄なディテールに価値を認めない。求める美しさは、シンプルでナチュラル。ニューヨーカーの理想の女性は、グウィネス・パルトロウ、故JFケネディJrの妻キャロリン。ふたりの共通点は、センスのいいクールビューティー。控えめなメイクだが、日頃のお手入れの成果が表れ、凛とした美しさを放つ。

己に厳しく、女に磨きをかける。ニューヨーカーは。まさに“体育会系の女”。果てしない目標に向かって、つねに前進していく。このエネルギーが、美の到達に欠かせない。

 

ファッションの若き才能が開花するセント・マーティンズ
多くをファッションデザイナーの輩出している、ロンドンのファッションスクール、セント・マーティンズ。ファッションについて学ぶといっても、縫い方の技術が重視よりも、それぞれの個性を発展させる教育方針がとられている。生徒同士で批評をしあうのも特徴だ。

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