『週刊金曜日』「金曜アンテナ」2017年1月20日号に掲載された記事です。
複数の間接事実を積み重ねて犯人と認定し、当初から冤罪が疑われている「恵庭OL殺人事件」。
弁護団は1月10日、死因や殺害方法など新証拠4点を用意し、2回目の再審請求を提出した。
この事件は、2000年3月に北海道恵庭市で女性会社員の焼死体が見つかったのが発端。「三角関係のもつれによる犯行」と同僚の大越美奈子受刑者が早々に容疑をかけられ、一貫して否認するも、殺人と死体損壊の罪で懲役16年が確定した。
不可解な点が多いこの事件。そのひとつが被害者の死因だ。「車の中で後部座席から頸を絞められての窒息死」と認定されたが、大越受刑者は被害者より小柄で、犯行現場となった車は2ドア。被害者には抵抗した際の傷はなく、車内からも痕跡は発見されていない。
この死因を覆すかもしれない意見書が今回提示された。「クロロホルムなどによる薬物中毒死」 判決の唯一の証拠となった鑑定書を再検証した法医学者は、「死体に見られる肺水腫」の所見に着目。肺水腫は窒息死では稀で、薬物中毒死の多くに認められるという。
被害者は目隠しされ、局部の焼損が最も激しかった。事件発生当初からそう伝えられていた。意見書では、「性犯罪の可能性が強く疑われる」と指摘している。
燃焼工学の専門家は確定判決と違う殺害方法を示した。死体はあおむけで発見されたが、後頭部の頭皮が炭化しており、「うつぶせで油類をかけて焼かれた後、あおむけで再び焼かれた」との見解だ。その方法であれば、現場を立ち去る時間は遅れ、大越受刑者のアリバイが成立する。さらに、「所持していた灯油10リットルを用いた」とされる認定もゆらぐ。
「開かずの扉は本当に開かない」と前回の再審請求棄却で、大越受刑者は涙したという。伊東秀子主任弁護士は、今度こそ「科学的真実にのっとった裁判を」と訴えた。