『専門店』「世界の専門店拝見 こんな店・あんな店」2002年1月号に掲載された記事です。
アフリカの工芸品などのフェアートレードショップCSAOは、セネガルおよび西アフリカを支援するNGO団体が運営している。セネガルに数年住んでいたヴァレリーさんは、1995年から活動を行っている。3年前に、ビジネス部門と活動団体の2つのセクションを一体化し、ショップをオープンした。店の商品を選ぶのは、セネガルで育った娘のオルディーヌさん。
今回は広報担当のマガリ・フラピエさんにお話をうかがった。
-この店はどのように誕生したのですか?
ここは、活動団体の責任者であるヴァレリーが開いたお店です。彼女は、アフリカの工芸や職人技にとても触発され、このような空間を作りたいと思ったのです。7区のグルネル通りで始めたのですが、マレに場所を移し、規模を大きくしました。ここで売っている商品の一部は活動団体の資金になり、アフリカの子どもたちなどに送られます。3つで10フランのカラフルなビニール製ブレスレットの売り上げ金は、ダカールのストリートチルドレンを援助する団体プロメテ・ユマニテールに寄付しています。また、アフリカ大陸の国々をかたどった木製パズルの売り上げは、フラントニテ・ムルチコロールという活動団体を援助するために使われます。
-カラフルな店内で、ウキウキした気分になりますね。
パリでアフリカを感じてもらえる店なのです。アフリカについて知ってもらい、アフリカに対する考え方を変えてもらうために、扉を開いている店といえます。同時に、アフリカのアーティストを支援するのも、この店の目的としています。私たちのショップは、同じ通りに3軒あります。それぞれ、アフリカの現代工芸品、伝統的な工芸品、そしてアーティストの作品を紹介するギャラリーと分かれています。
-商品は、すべてアフリカで製造されているのですか?
そうです。主な国は、セネガル、マリ、コートジボワールです。こちらはカラフルでモダンな作品が中心ですが、もう一軒のほうは、コートジボワールなどの伝統工芸品をそろえています。ギャラリーでは、アフリカの新進アーティストの作品を展示しています。さらに、向かいのレストランでは、セネガル出身の女性が作る家庭的なアフリカ料理を楽しめます。ランチのコースは、前菜とメインで89フランです。今日のメニューは、野菜のサモサ、バナナソテー付きのチキンの串焼きですね。アフリカの飲み物である、赤と白のハイビスカスのジュース、しょうがのジュースといったアフリカの飲み物も、ぜひ試してみてください。
-最近、パリではアフリカアートがよく話題にのぼりますね。
アフリカのアートは今、パリで流行しています。一年前ぐらいからでしょうか、アフリカがブームになっていますね。アフリカに興味を持つ人も増えてきました。でも、アフリカについて、まだあまり知られていないことが多いですよ。ここに来た人は、アフリカの工芸品を見て、アフリカを想像し、旅行した気分になると思います。パリやヨーロッパの人はもちろん、アメリカ人や日本人など、ここを訪れる世界中の人に、アフリカの工芸品を紹介したいですね。
-どのような人が、この店にやって来ますか?
パリに住む人はもちろん、アフリカのことをよく知らないフランスの地方の人もたくさん来ます。リピーターになる人がほとんどです。ピカソ美術館など、近くにたくさんの美術館があり、ツーリストも多いね。
-たくさんのアフリカ人アーティストと仕事をしていますか?
ええ。パリにはアフリカのアーティストを支援する組織がないので、私たちが工芸職人や工芸品を支援しています。
-どのようなアーティストが活躍していますか?
マックスウエル・ウセイ・アベイエは、廃棄物を利用して、機械や模型、オブジェを作っています。彼の作品は、ヴィヴィッドで、とてもダイナミックです。
アドリアン・アブドウァカール・センは、もともと地方で山小屋やポンプを作っていた人でした。ポンプなどを解体するかたわら、家具を制作していたのです。使用済みの石油缶で作ったアフリカ独特の椅子は、この店でも人気があります。この椅子の原型は、首長が座る伝統的な台なのです。石油が入っていた大きな缶の金属版を切り、ハンマーでたたいて溶接し、家具を作っていきます。プラスチックが再利用されるように、金属板もまた再生されるのです。彼はカラフルなバケツを選び、明るい色を効果的に使っています。
ムササ・サコも、廃棄物を使ったオブジェのアーティストで、古いアフリカの写真をコラージュした作品が有名です。トラックの大きなバネの部分と、そのトラックで運んだ商品、そしてジーンズの一部を使った椅子はとてもユニークです。現在、オランダで開催される彼の展覧会を準備しているところです。また、ジブリル・サガナも、面白い作品を作っているアーティストです。
-小物から大きなものまで、実にいろいろなものがありますね。
小さなアクセサリー、インテリア小物から、椅子などの大きめの家具まで、あらゆるものがおいてあります。ビーズのブレスレットなど低価格のものからと、値段もさまざまです。素材も、皮製品から廃棄物利用の製品まで、バラエティに富んでいます。
-どのようなものがよく売れますか?
アフリカの模様が入ったプラスチック製のゴザは、とても売れ行きがいいですね。実用的で、どんな場所にも置くことができます。屋外でも使うことができますよ。このゴザは、毎年、新しいコレクションを発表しています。オルディーヌがセネガルまで行き、色やモチーフなどのデザインを決めます。だからといって、私たちが、「こうしてください」と命令するわけではありません。あくまでも、アフリカの工芸として尊重し、アイデアを出し合っていくのです。
-おしゃれな感じをプラスすることも大切なのですね。
ワックスを塗ったセネガルの伝統的な生地で作ったバッグも、人気があります。面白いのは、取っ手のところがプラスチックの電気コードを使っているところです。とてもオリジナリティがありますよね。不要になったどんなものでもよみがえらせ、新たな使い道を見つけています。
-本当に、アイデアいっぱいの商品ばかり…。
コカ・コーラやジュースの缶で作ったエッフェル塔やアタッシュケースは、工房で作られています。ガラスに焼きつけた絵は、アフリカの独特の工法で、現在でも小さなアトリエで制作されています。私たちは、いろいろなテーマを提案し、職人やアーティストたちと相談しているのです。こうして、楽しい作品が生まれていきます。
-もう一方の店も紹介してください。
あちらには、伝統的なアフリカの工芸品がそろっています。キャンバス地の生地、木製のオブジェや家具など、バラエティ豊かな品ぞろえです。いずれも、とても創造力豊かな作品ばかりです。また、店内には、生地やオブジェの歴史など、アフリカに関する本も展示してあります。
-まるでギャラリーのようですね。
あちらのショップでは、無理に買い物をしていただく必要はありません。訪れることに喜びを感じていただければ、私たちにとって一番うれしいのです。アフリカのものに触れ、親しんでもらうための場となれば、満足なのです。
パリの食べ物屋(28のレストランやカフェを紹介)